(1)著作権の由来
著作権は、もともと中国や日本で確立された制度ではなく、ヨーロッパで確立された制度です。野口教授によれば、三大発明を成し遂げた中国が、今は世界最大の超大国になっていない理由です。
もし特許権や著作権が認められないのであれば、知識は私有されるでしょう。私物化した上で、免許皆伝というような形で、弟子の一部に与えられるでしょう。
バセドウ病は、眼球突出や甲状腺腫大があるので、重症の患者さんを医者が診ればすぐ分かります。ヨーロッパでは、各国がそれぞれの発見者の名前で呼んでいますが、中国と日本にはそのような習慣はありません。中国や日本では、発見は私物化されるか、為政者に取り上げられるだけでした。発見者の権利を保障した上で、共有されることはありませんでした。それでは、発明家は存在することができません。苦労して発見や発明を行っても、すぐに真似されるので、本人の得になりません。開発に多くのお金をかけることはできません。

(2)著作権の目的
著作権自体が最も偉大な発明です。期限付きで、著作者の権利を認めます。著作権料を支払って使用します。期限が切れた後では、自由な使用を認めます。この制度により、著作者にはお金が入ります。著作者は、著作や発明に専念することができます。それで全体として、社会は大きく前進します。

今後世界は、生産性の向上を目指して、物作りからサービスの提供へと、さらに移行することが予想されます。その場合に著作者を著作権によって保護することが不可欠です。

(3)日本の現状
著作権(知的財産権)は充分に保護すべきですが、期限が過ぎたら自由な使用を奨励すべきです。日本においては、著作権の運用が円滑でない面もあります。
①中村教授は青色発行ダイオードの発明に対して、会社から2万円のお金を貰っただけでした。中村教授が起こした裁判で、会社は3億円を支払う約束をしました。私の考えでは、会社も発明に対して場所と道具を提供するなどの貢献をしているので、教授が7~8割程度、会社が2~3割程度の割合で利益を配分するのが適当だろうと思います。会社は従業員の知的財産権を盗んでいるということです。
②以前、弁護士会のホームページには、リンクするなと書いてありました。著作権について、単に裁判を起こして収入を得るだけでなく、国全体を指導する役割を果たすことが弁護士には期待されます。著作権というのは法律の概念です。
③日本には、公正な使用という考え方が無く、百科事典でマンガを紹介することも認めないので、他国版のWikipediaにはマンガの図があっても、日本版のWikipediaに図が無いことがあります。
④特許が切れた薬も、元のままの高い値段で、売られています。安い薬(ジェネリック医薬品)の普及は、充分ではありません。

(4)米国の「公正な使用」
アメリカでの「公正な使用」という考えは、アメリカの裁判所で一般的に支持されている考え方です。これに該当するかを判断する際に、客観的に明白な基準があるわけではありませんが、判例法が積み重なっています。判断基準の一つは著作者がその著作により収入を得ているかどうかということです。もし元の文章が、ネット上などに無料公開されているのであれば、その使用は「公正な使用」として認められる可能性が高くなります。

(5)現地法
国際条約によれば、現地法に従えば良いことになっています。日本においては、日本の著作権法だけを守れば良いということです。これには、問題もあります。著作権保護に熱心でない国が1ヶ所でもあれば、その国内でインターネット上に公開すれば、世界中からの閲覧が可能になってしまいます。他国政府はその国へ圧力をかけるでしょうから、無制限にはできないでしょうが、一つの抜け穴になります。

(6)Wikipedia
Wikipediaは、誰でも著者として参加できるネット上の百科事典です。
中立的立場で書くことになっています。しかし真の中立はあり得ないことです。例えば、ブッシュ大統領は、9.11の直後に「アメリカ合衆国の考えに賛成しない者は敵であり攻撃する」と言っていました。Wikipediaが攻撃されなかったのは、中立ではないからです。
Wikipediaの編集方針は、異なる意見がある場合には、両論併記ということになっています。両論併記ならそれなりの意味がありますが、なかなかそうはなりません。
例えば「紙巻タバコ」の項目を見てください。日本では紙巻タバコを吸うことにより、年間で10万人が、がんで死亡していると計量されます。その他にも心臓病、脳卒中にて死亡します。この項目だけ見る若者もいるでしょうから、ニコチンの強い依存性や、多くの病気を作るという情報は、欠くことができません。しかし、書いても、1~2週のうちに消されてしまいます。タバコ会社が書く宣伝文のようなものに書き直されてしまいます。利害の対立があれば、中立などあり得ないのです。

(7)タバコ病
タバコ病という言い方は、この問題が薬物依存である点に着目した言い方です。薬物依存症という病気であるから、医療の対象になるということです。現状を悪く言うなら、医者にとって喫煙者はお客さんであるということです。
しかし、殺人事件の被害者を「病気であった人」と言う人はいないでしょう。業者は、依存性が強く毒性の強いタバコを、うまく宣伝して青少年に売りつけています。また、「軽いタバコ」などの誤解を招く言い方で、喫煙者の自己欺瞞を誘導します。癌だけで毎年10万人の死者が出るのですが、巨大な利益が出るので、政治過程を利用して、合法化しているのです。
タバコ病には、また、情報の欠落があります。必要な情報が提供されていません。青少年が喫煙を始める時に、必要な警告が行われていません。それは、依存性や毒性に関する情報であり、タバコ業者がどのような心理的手管を使うかの情報です。また、喫煙を続けている人にも必要な情報が提供されていません。禁煙法の詳しい情報です。
情報が全てです。インターネットの出現により、情報がほぼ無料で手に入るようになりました。この点では大いに期待できます。