<全ての栄養素が必要であることの補足>

脚気について、「栄養学の歴史」は次のように述べています。「明治15年に海軍の竜驤はニュージーランドから米国を航海したところ、169名の脚気患者が発生し、25名が死亡した」。ただし、「2年後に高木寛兼が食事の改善を行ったところ、わずか14名の脚気患者が発生しただけであった」。

ビタミンBも全く摂取しなければ、命に関わるのです。

鉄が欠乏がし始めると、先ずは貯蔵鉄が使われます。さらに鉄が不足すると赤血球の鉄が使われます。その場合は鉄欠乏性の貧血になります。さらに鉄が不足すると、呼吸用の鉄が不足するようになります。究極的に不足すれば、内呼吸ができなくなるということです。肺から酸素を取り入れても、組織で燃焼の反応ができなくなるということです。

鉄も全く摂取しなければ、命に関わるのです。

必須栄養素はその意味で必須です。欠く事ができません。アミノ酸桶や、必須元素の桶のイメージは、必須栄養素相互に代替される関係や補足される関係があれば、成立しないわけですが、全ての要素が必要であること自体は変わらないわけです。

工業の完成品についても、部品が全て必要です。部品が一つ不足するイメージとしては、ハンドルが付いていない自動車とか、タイヤが一つ付いていない自動車とか、電気の配線が無いビルとか、水が出ないビルとかを考えることができます。そのような物は役に立ちません。部品は全て必要なのです。

食事療法を行って、栄養素が一つでも不足すれば、そのような欠乏症になる恐れがあるということです。


<医者は食事療法に熱心でない>

食事療法にあまり熱心でない医者がいるかもしれません。今、あなたが開業医であったとします。1日に100人の患者さんを診察して盛業であったとします。患者さんは主に高血圧や高脂血症や糖尿病などの慢性疾患の患者さんが多いとします。その場合にあなたは、食事療法について熱心に患者さんを指導するでしょうか。

理想的な食事療法を実践してもらい、100人のうち50人は薬物が不要になり、食事療法だけで済むようになったとします。そうすると、あなたの医院の売り上げは半分になります。売り上げが半分になれば、固定的な費用もありますから、利益もっと減ります。

あなたは、自分の医院の売り上げを半分にするようなことを喜んでするでしょうか。多くの医者は、そのようなことをしてくれるのでしょうか。してくれない医者も多いだろうと思います。

食事療法を熱心に手取り足取り指導してくれる医者はあまりいないかもしれません。だから、食事療法については、必要な部分は、自分で勉強する覚悟が必要になります。


<食事療法の主観的効果の補足>

食事療法というのは、要するに、過剰に摂取している栄養素を減らして、不足している栄養素を増やそうということです。だから、食事療法をしない時に比較して、体調は良くなるわけです。例えば次のようになります。
・体調が良くなる
・体が軽くなる
・風邪を引かない
・頭がすっきりして良く働く
・空腹感をあまり感じない
もしあなたが、食事療法を実行した結果、空腹を強く感じて、食べ物やお腹の空き具合がより気になるようになったのなら、それはおそらく、何らかの栄養素が不足しているということです。また、もし、時々風邪を引くようになったのなら、やはり栄養素の不足が考えられます。真に健康な人は、あまり風邪も引かないものです。体調がより良くならないのなら、食事療法の内容を再検討する必要があります。


<食事療法の客観的効果>

Willett教授は、ハーバード大学の栄養学と疫学の教授です。「食事を修正することによって、どのくらいの病気が予防できますか」という問いに対して、Willett 教授は次のように答えています。

「健康な食事の影響力は、禁煙や定期的な運動と結びついた場合には、甚大です。例えば、我々の研究によれば、健康なライフスタイルの一環として正しい栄養の選択が行われた場合には、心筋梗塞の82%を予防することが可能であり、脳卒中の70%を予防し、2型糖尿病の90%以上を予防し、大腸がんの70%以上を予防することができるのです。これに対して、最良の薬は、心筋梗塞については、それを20%~30%減らすことができるだけです。そうであるのに、我々の資源のほとんどは、健康的なライフスタイルや栄養の遂行に向けられておらず、薬物治療の遂行に向けられているのです。