アレン・カー氏の「禁煙セラピー」を読みました。アマゾンの売れている本のランキングで400位くらいですから、よく売れている本です。
「タバコに依存するのは、ニコチン中毒のためではなく、中毒の結果起こる洗脳のためである」という考えに基づいて、喫煙者の自己欺瞞を丁寧に否定しています。
講義式の禁煙セラピーは、受講料が約5万円であるそうですが、禁煙できない場合は全額返却であるそうです。少人数のグループ制で、返金率は10%未満であるそうです。日本での受講者は少ないようです。
この本が述べる細部の科学的事実については、多少異論もあります。
しかし、禁煙に関する概括的状況を説明している点で、評価できます。タバコ会社が、喫煙者の自己欺瞞を必死に助長していることを考えると、禁煙法として案外有効かもしれません。
CDCのホームページ内には「専門家によるカウンセリングを受ける時間に比例して、禁煙達成率は向上する」という文がありました。病院の禁煙外来で、医者による3分だけの話を聞くより、こういう本をじっくり読むほうが、よほど効果的でしょう。
私は、生活習慣病は、情報欠乏症と呼ぶべきだと考えています。
著者は、ニコチン置き換え療法を否定しています。この点でも、主流派や政府機関とは異なっています。しかし、これも一理あることです。ニコチン置き換え療法の効果は、禁煙率を約2倍にすることです。多くの禁煙法の禁煙率は、1年後で5%ほどです。それを10%にしても、大した変化ではありません。
「ダメ絶対」のホームページでは、薬物依存症を扱っています。麻薬や覚せい剤やアルコールの依存症においても、持続注入療法は行われていません。依存薬物を絶対に摂取しないのも一つの方法です。
食欲を否定することはできませんが、理性によりコントロールすることはできます。性欲をコントロールできない人は犯罪者です。タバコを吸いたいという衝動も、理性によりコントロールが可能であると思います。そのためには、敵の性質を充分に理解することが必要です。
喫煙者がこの本を読む意義は大いにあると思います。