「糖尿病は薬なしで治せる」 渡邊昌先生

渡邊昌先生は、前・国立がんセンターの疫学部長であり、現・東京農工大の教授です。私は、渡邊先生の「日本人のがん」という本を熟読しています。
糖尿病は薬なしで治せる」というような題の本は、信憑性が高くない場合が多いので、本当にあの渡邊先生がお書きになった本かどうかを確かめました。

この本は、渡邊先生自身が糖尿病になり、ご自身の病気を薬無しで治した経験が基になっています。ですから、本の題名は「私は自分の糖尿病を薬なしで治した」とでもすれば、誤解が少なくなるでしょう。

まず、渡邊先生は、食事を改善されます。糖尿病の食品交換表に従って食事をされます。1日に1600カロリーを摂取し、脂肪は総カロリーの20%に留めます。1日3食を規則正しく摂取します。やむを得ず外食となる場合には、半分残すことにしておられます。食品の重さをはかるなどして、厳格に食事療法をしておられます。

また、運動は毎日1万歩を歩いた上で、週に3回水泳をしておられます。また夕食後に30分ほど自転車(エルゴメーター)をこいでおられるそうです。そしてフルマラソンにも参加しておられます。

特筆すべきは、渡邊先生は血糖の自己測定器を購入して、1日に10回とか20回とか測定して、血糖値を上げる要因や、下げる要因を見極めておられるという点です。そうして、例えば、食後の運動が、血糖値を下げるうえで、有効であることを確かめておられます。

そうして、ヘモグロビンA1Cが、12.8%もあったものが、3ヶ月後には9.6%となり、次の3ヵ月後には7.8%となり、さらに次の3ヶ月後には5.9%になったそうです。

日本の現状では、食事療法や運動療法については、おざなりの場合が多いと思われます。食事や運動について説明しても、医者の収入にはなりません。慢性疾患指導料のようなものはありますが、受診のたびに、一律に徴収したりしています。糖尿病や高血圧や高脂血症を薬なしで治しても、医者の収入にはなりません。それどころか、確実な収入減少になってしまうのです。

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(医師向け)

<明日の記事へ続く>