始めに全体の計画を示すこと

リスク・コミュニケーションにおいては、なるべく早い時期から、情報提供を包み隠さずに行うことが重要であるとされています。

診療においても、なるべく早い時期に全体の状況を示すことは重要です。

(1)例えば腹痛の大人の方が受診したとします。なるべく早い時期に、診療計画の全容を話しておくことが必要です。例えば、患者さんの話を充分に聞いて、診察を充分に行った頃に、診療についての話をします。例えば次のようです。
「お話を伺って、診察させて頂いたところ、今のところ可能性の高いのは、便秘による腹痛です。ですから、今から浣腸をして便を出してみて、それで腹痛が消えるかどうかを確認しましょう。もし便を出しても痛みが消えない場合は、他の原因が考えられます。その場合は、腹部超音波検査と血液検査を行って、原因を突き止めましょう」。
全体の計画を示して了解して頂くことが重要です。これに対して、全体の計画を示さないのは次のようです。
腹痛の患者さんに対して、「まず、腹部レントゲン撮影をしてみましょう」。腹部レントゲン写真に異常所見が無いと、「では、超音波検査をしてみましょう」。それも異常が無いと「では、血液検査をしましょう」。これでは、患者さんは途中で怒り出すかもしれません。
このように、1歩1歩進んで行くことが必要なときもありますが、その場合でも、始めに全体の計画を示して了解を頂いておくのならば、問題なく行うことができます。

(2)患者さんが入院される場合には、医者は入院治療計画書を書くことになっています。検査計画や治療計画や入院期間の見通しなどを記入して、カルテに保存し、写しを患者さんにも手渡します。この入院治療計画書は、入院による診療を円滑にする効果があると思います。

(3)予防接種の副作用についても、事前に話しておくことが必要です。予防接種の後には、発熱したり、注射の箇所が赤く腫れたり、しこりができたりします。時として、これを医療ミスと考えて、強く抗議する患者さんがおられます。いったんそうなると、どのように説明申し上げても、言い訳しているだけだと受け取って、納得されません。ある小児科の開業医の先生は、予防接種をしておられませんでしたが、その理由をお尋ねしたところ、「副作用が出たときに、患者さんとの対応が嫌だ」と言っておられました。
これも事前に申し上げておけば、トラブルを避けることができます。