雨脚は強く、容赦無くデビルを叩く。一瞬でも正丸峠を越えてその先の正丸駅まで行こうと思った心をいとも簡単にへし折られる。
兎に角、野宿するにしてもこのままじゃ風邪ひいちゃうからなんとかしなくちゃな。
そう考えると峠前の最後のコンビニでビニール合羽上下を購入する。これがあればなんとか耐え忍ぶことが出来るだろう。デビルスーツを脱いだとしても合羽を着てれば電車に乗って帰ることもできるかもしれない。
負け犬…。
そう、俺の中で何かがガタガタと音を立てて崩れ落ちていく。もう早くこの闘いから逃げ出したくてしょうがなかったのだ。
雨は一層激しさを増し、歩道は川のようになっている。それでも車道に出ては時折通るトラックが危険だ。
無事に家まで辿り着く…。
何があろうともこれだけは守らなくてはいけない最後の約束なのだ。歩道をキープしながら進めば足元はびしょ濡れだ。
峠で泥だらけになったシューズもすっかり綺麗に洗われてしまった。真っ暗闇の中雨に打たれて独り進むのがこれほど寂しいこととは。
なんでこんな馬鹿げたことやってんだろうな…。
自問自答を繰り返しながらも少しずつ進んでいく。
好きでやってる事じゃないか?
いつの間にかデビルがデビルで完走する事に囚われすぎていたのかも知れない。自分が楽しんでこそのウルトラだ。
当然、何も準備しないで行って楽しめるほど甘いものじゃない。全ては自分の責任なのだ…。
「デビル、大丈夫か?」
「すいません、もう駄目です…。」
こうして、後ろから来た大会車両にリタイアを告げるとデビルの雁坂はおわりをつげた。
もう一度、この闘いに還ってくる。出直しを誓うデビルでありました…。
【終わり】
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