視界が悪く、足元は溶けた雪と降り続ける雨でぐしょぐしょ。水溜りを避けるように走るもののそんな小技はあまり意味が無い。あっという間に力王はびしょ濡れ…。
とはいえ、サンダルに比べれば明らかにその保温性は高い。しかも作業現場で絶大なる信頼を寄せられるグリップ力はこのコンディションでも威力を発揮!
(このチョイス、我ながら逝けてる!)
次第に明るくなっていく山中湖へ向かう道でその気温の低さに既に指先の感覚はなくなってきた。
それでもデビル体内の炎は燃えている!
(ガッチャごんからどこまで逃げられるか…。)
それだけを考えて序盤を必死に駆けて行く。いつもなら富士山の写真を撮るためにカメラがずらっと並んでいる忍野八海にも、流石にこの天候では人はいない。
山中湖周回にはいる前に、既に100キロのトップ選手に追い抜かれて行く…。デビルのような亀ランナーではどれだけ頑張ったところであの領域には辿り着けることは出来ないだろう。それでも何がデビルをここまで突き動かすのか?
山中湖周回に入って暫く行くと、おぬしも悪よの~の悪代官発見!
「先に行きます!後で抜いてください!」
そう声をかけると先行する。
それにしても寒い…。山中湖畔の道路にある電光掲示板では
0℃
の表示。一気にやる気は無くなるが、きっとこれもデーモンの仕業に違いない。寒いのは気のせい気のせいと魔法の言葉を呟きながら進んで行く。
やがて…
「勝手エイド」
と名付けられた移動式私設エイドが現れた!
「いやあ、寒い寒い!」
「あったかい飲み物もあるよ。何飲む?」
「とりあえずビールを」
「寒くても飲むんかい!」
と言う会話を交わし、デ・ビールを頂く。
「うんめ~!!」
「そうかいそうかい、早朝から飲むビールは美味いかい?」
「最高だよ。」
「そういえば悪代官は18キロでリタイヤするってメールが来てたよ。」
「マジっすか?」
あの百戦錬磨の悪代官がリタイヤするとは、この寒さはやはり気のせいではないのだ。更に激しさを増すデーモンの攻撃にデビル武者震いせずにはいられないのであった…。
《続く》

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