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渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「なるほど・・・五郎さん。どうして死んでいるマウスと
生きているマウスがいるんですか?」
亮は元気に餌を食べている5匹いるマウスを見て疑問に思った。
「ええ、それが不思議なんです。発症と同時に死んでしまったマウスと
 あの様に元気にしているマウスの差が激しいんです」
「まさか、オスとメスの違いじゃないでしょうね」
亮は隣の部屋の個々に分れた靴箱大の透明のガラスケースの
10個を見て言った。

「えっ!」
五郎は慌てて隣の部屋のケースに貼ってあるマウスのデータを見た。
「確かに死んでいるのはオスだけだ!ちょっと調べてみます」
五郎はアシスタントを呼んでマウスのケースを持って行った。

「これってどういう事?」
五郎の慌てた様子を見て小妹が首を傾げた。
「もしかしたら女性が発病しないウイルスかもしれない」
「そんな事有るの?」
「うん、元々遺伝子の性染色体XXを持っている女性と性
染色体XYの男性の違いで女性の方が免疫力が強いと
言われている、遺伝子操作で作ったウイルスなら
 直さら顕著だと思う」

「でも蓮華と桃華は発病したわ」
小妹が質問すると亮は透かさず小妹に答えた。
「あれはインフルエンザの症状で奴らの作った
ウイルスの毒性じゃないはずだ」
亮は研究室で記録されたマウスが発病して
短時間で死ぬまでの映像を確認していた。

「亮さんの言った通り死んだのはオスだけです。
 それだけじゃなく、」
そこへミーティングルームに入って来た五郎が叫んだ。
「じっちゃん!」
亮が拓馬を見るとうなずいた。
「五郎さん、僕の考えを言います。あのケースに入っていたのが
人工的に作られたウイルスとします。

このウイルスは遺伝子の関係でオスにしか感染しない、
たとえメスに感染しても死には及ばないと考えると
奴らは男にも女にも感染するウイルスを作りたかったが
時間が無い、その為に鍛え抜かれた肉体を持つ
蓮華と桃華にそのウイルスを植え付け宿主にして増殖して
女性にも感染する新しいウイルスを作ろうと
思ったのではないでしょうか?」
亮が五郎に言うと五郎は腕を組んだまま考え込んだ。

「確かにマウスに打ったウイルスと桃華さんの血液から
 採取したウイルスに変化が有りました。亮さんの言った通り・・・」
「注射を打ってすぐに発病した蓮華は白血球の反応が早く
体内でウイルス死滅させる可能性があるので
 必要なかった、逆に発病が遅かった桃華は宿主になる可能性があったので
 茂蔵はゴルフ場にある研究室に連れて行った。どうですか?」
「なるほど」
五郎は亮の推理の速さに舌を巻いた。

「でも、森田はアメリカでウイルステロを起こすつもりじゃないの、
 わざわざ日本でやる必要ないじゃない」
小妹は森田の考えに疑問に思った。
「じっちゃん、五郎さん、小妹聞いてください。
もし僕がウイルステロを起こす
 シミュレーションをしました」
亮はホワイトボードに事件の流れを描いた。

「なんだ」
拓馬は天才の亮が悪事をシミュレーションしたと聞いて
鳥肌が立った。
「まず、このウイルスです。もしアメリカで
ウイルステロを起こすなら、アメリカへの
 潜入方法です。アメリカの近隣国からキャリアが
 入国したらすぐに出所が解明されてしまいます。
もし日本人ビジネスマンがキャリアだったら、
ニューヨーク、ワシントン、ロサンジェルスへ
ダイレクトにウイルスを運んでしまう。
そうなればアメリカから見れば発祥地の特定が難しくなり
仮に特定されても日本の先の香港か中国と決め付けてくるでしょう。
感染力の強いこのウイルスは
調査中の段階でアメリカ全土に蔓延してしまい手遅れになる」

「ねえ、ワクチンを作るのにどれくらい時間がかかるの?」
小妹は今まで疑問に思っていた事を聞いた。
茂蔵は桃華にもう1本の注射をすると
桃華は蓮華と違って何事も無く息を大きく吸っただけで
目も開けずにいた。
「こいつはダメだ」
茂蔵はバンのスライドドアを開け蓮華を
椅子から落とそうとすると
手を止め炭素繊維ウエアのチャックを上げ椅子から蹴って落とした。
「裸で死ぬのは気の毒だ・・・」
上り坂のカーブで車から落とされた蓮華の体は
サッカーボールのように地面で一度はずみ
路側帯のガードレールにぶつかって
崖下に転がって行った。

「蓮華、しゅくしゅと言ったんだね」
「ええ、意味は分からないけどしゅくしゅ」
「分かった」
亮は蓮華の言葉で自分の頭の中でモヤモヤしていた
物がはっきりとなった。
「大変だ!」
そこに拓馬から連絡があった。
「亮、小妹と一緒にレベル4室にすぐに来てくれ」
「はい」
前日、亮が持ち込んだアルミケースの
中身を検査しているレベル4室に入った。

「じっちゃん・・・」
実験室のマウスを見て顔色を変えている拓馬を見て
何か良からぬ事が起こった事に亮は気づいた。
「昨日見つかった物は大変なものだった」
「はい」
拓馬は亮を隣のミーティングルームへ
連れて行った。
「おはようございます」
五郎が難しい顔でミーティングルームへ入って来た。

「亮さん、まず実験結果を伝えます。あのアルミケースの中に
 入っていた透明の液体は新種のウイルスが入っていた。
 マウスに注射して発病まで12時間、飛沫感染ならもう少し
 時間が掛かると思います。とにかく感染力と毒性が強いものです」
亮はガラスで仕切られた隣の部屋に置いてあるケースの中で
死んでいるマウスを見た。
「インフルエンザですか?」
亮がノートパッドのデータを見ている五郎に聞いた。

「人間のインフルエンザA型B型C型、亜型に一致しません。
 鳥インフルエンザのH7N9型かH5N1に似ているような気がします」
五郎は顕微鏡写真が写っているノートパッドを亮に見せた。
「これが人へ感染したら大変な事になります」
「もし、これが人工的に作られたものならテロ目的の
パンデミック(爆発的感染)が起こるな」
拓馬が腕を組んで答えた。
「今、桃華さんの血液からウイルスを抽出しています。
 これの毒性はもっと強いかもしれません」
「ふう、桃華の血液が敵に渡らなかっただけ助かったな。
 亮お前のお蔭だ」
拓馬は亮の肩を叩いた。
「そうだ、蓮華が目を覚まして状況を説明してくれました」
亮はそう言って蓮華が言った宿主の事を2人に伝えた。

「ウイルス感染における宿主とは、
感染した人体は子孫ウイルスの複製と増殖機能を持ち合わせ
抗生物質の効かない耐性ウイルスに変化させる可能性があります。
つまり蓮華さんの場合、ウイルスを注射された時点で感染発病しましたが
桃華さんの場合、感染後発病まで時間が掛かる事により
宿主となってより強いウイルスを体内で増殖させたかもしれません」
五郎は桃華の血液のウイルスが気になっていた。

「それで、桃華はどうなります?さっき僕の骨髄液を取ると
 沙織さんに言われたんですが・・・」
「あはは、大丈夫。亮さんの輸血のお蔭で体内のウイルスは死滅しています。
 今、抗体を調べる為に採血をしているところです」
五郎は大きな声で笑っていた。
「ああ、良かった。骨髄液の採取は相当痛いと聞いていたので」
「沙織さんに騙されたんですよ。彼女は白血病の骨髄移植経験者ですから
 痛みを知っているんでしょうね」