グッド・ジョブ媚薬8 黙示録88 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

悦子はベッドの枕元にある時計を見て
亮に甘えてきた。
「悦子さん、黒崎正一郎さんてどんな人ですか?」
亮はすべてを知っていながらあえて悦子を味方に
引き入れる為に黒崎の話を始めた。
「大阪の黒崎グループ会社のトップです」
悦子は自分を悦子と呼んでもらって気分を良くしていた。
「でも今日の契約書のどこにも黒崎さんの名前がありませんでしたね」
「ええ、こんな小さな仕事に自分の名前が出るなんて
彼には許せないんだと思いますよ」
「小さな仕事か・・・わかってないなあ」
「何が分かっていないの?」

悦子は吐き捨てるように言った亮の言葉が気になった。
「たとえば大手商社のやっているビジネス、数百億、数千億円の
 仕事ですが純利益率は1%以下、しかも投資金と人件費リスクは大きい。
 つまり、取引金額が大きいからと言って偉いとは一概に言えないと
 思っています」

「でも私は大した仕事をしていないわ」
「たとえば、大手企業の社員の平均年収は1100万円、月収90万円
少し程度です。つまり収入で考えると一日5万円の売り上げを上げる
そば屋さんを営業しているのとさほど変わりません。
汗を流して一生懸命働いているそば屋さんを大した仕事では無いと言えますか?」

「いいえ、素敵です」
亮の的確な話に悦子は納得していた。
「そうです。自分の仕事に誇りを持って人が喜ぶ仕事をすれば良いと思いますよ。
 悦子さんが安くて良い物を売ればみんな喜びますよ、そして売り上げも伸びます」
「そうですね、團さん」
「亮って呼んでください。本名はアキラですけどみんなリョウと
 呼んでいます」
「はい、亮さん」

「2店目を早く出せるように頑張ってください」
「はい、これからもアドバイスお願いします」
悦子は亮を籠絡するどころか黒崎正一郎の愛人やめる事を考えていた。
「こちらこそよろしくお願いします」

~~~~~
「キャシー、元気か?」
正一郎と話をしていたキャシーに内村が声を掛けた。
「ウチムラさん、元気です」
内村とキャシーが親しげにハグをした。
「内村社長、キャシー親しいんですね」
正一郎が内村に聞いた。
「ああ、アメリカのスチュアートエネルギー省長官
 主催のパーティで知り合ったんだ」
「そうですか・・・」
正一郎はアメリカ、しかもアメリカ大統領の右腕と言われる
スチュアート省長官と聞いて嫉妬心が湧き上がった。
「実はキャシーは大統領の後援者の1人なんだ」
内村は自慢げに正一郎に話をした。

「なるほど、キャシーさんは国と随分太いパイプをお持ちなんですね」
正一郎はキャシーを利用してアメリカとのビジネスを思い浮かべていた。
「うん、その政治力を利用して世界中に何千と言うビルを持ち総資産3兆ドルの
 ランド不動産のトップだ。親しくして損はない」
「そうですね。キャシーさんは日本にどれくらい滞在の予定ですか?」
「日本支社が安定する半年くらい居るらしいですよ」
「えっ、そんなに長くですか!」
「私はそう聞いています。六本木にマンションを買ったそうですから
 本当じゃないですか?」
内村は正一郎にキャシーに興味を持たせるように
巧みに仕向けた。
「内村さん、キャシーさん付いて色々教えてくれませんか」
「分かりました、詳しい事は蝶で飲みながら・・・」
内村は期待を持たせて正一郎の耳元で囁いた。
「は、はい」

~~~~~
「亮さん。私黒崎と別れます。今の仕事を始めた時から今愛人の手当て
をもらっている訳じゃないし、この部屋だって黒崎の名義、
玄関の部屋だって鍵が掛かっていて私は入った事もない」
「そうですね、収入が安定しているなら独立すべきです。愛人は永遠に
 妻にはなれません。それに年相応の男性と付き合うべきだと思います」
「そうよね、その通りだわ」
亮は完全に悦子を自分の方に顔を向けさせた。
「亮さん、あなたは不思議な人ね。いったい何をしている人なの?」