ホラー小説 地獄タクシーⅡ 八章 髪鬼 27 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

礼司たちが飛田家の前に止まっていた浜田の車の

後ろに着いたのは十時を過ぎていた。

「あと一時間」

礼司が前に止まっている浜田の車を見ながら

「いつも緊張するね」

魔美が手の汗をジーンズで拭くと

「そんなに?」

一徳が後に居る魔美を振り返って見た

「私も恐い、人間の体を真っ二つに切る鬼が」

屡奈の手が小刻みに震えていた



「屡奈さん、あんたにプレゼントだ」

金子は黒い糸を渡した

「先生なんですか?これ」

「弓の弦だよ」

「えっ?先生弦も作るんですか?」

「いや、ご先祖が作った物らしい。せっかくの立派な

弓に今の弦じゃ合わないだろう」

「ありがとうございます」

「これで鬼をいっぱい倒せるだろう」

屡奈は鬼の恐怖からわずかに解放されてホッとした

礼司はドアを開けて外に出て

浜田の車へ向った



「お疲れ様」

礼司は浜田の車の運転席の窓を叩くと

「あっ、お疲れ様です」

「どうだ?」

「見てください」

飛田の家の下のほうから

赤黒い澱んだ気が上がってきていた

「議員は?」

「九時頃戻って来ました」

「夜野さん」

山野が助手席から声をかけた

礼司は後の席から乗って

「なんだ?」

「あの、髪鬼は飛田先生を狙っているんですよね」

「ああ」

「じゃあ髪鬼は何処から来るんですか?」

「さあ、何処に隠れているのか、ここにいれば必ず来る一時間後にな」

「はい」



「さて、何人で向こうへ行こうか?」

礼司は浜田に向って話しかけた

「夜野さんと魔美ちゃん、山野さんと」

「先生」

「先生が行くんですか?」

「うん、残り一席だ」

「私か屡奈か由美さん」

「弓が使える屡奈がいい、こっちをしっかり守ってくれよ」

「分かりました」

礼司が時計を見ると十時四十五分をさしていた

「山野君、こっちに移ってくれ、段取りを説明する」

「分かりました」

山野が車から降りると電話がかかってきた



「兄さん、あったわよ」

「何が?」

「ハサミよ」

「本当か?」

「私が友達にハサミを貸したの忘れていたの。これ兄さんのよ」

「よし、すぐに持ってきてくれ。十一時までに」

「無理よ後十五分しかない」

「どうした山野」

「ハサミが見つかったそうです」

「どこで」

「妹が渋谷で」

「分かった、行くぞ」

「はい」


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