ホラー小説 地獄タクシーⅡ 八章 髪鬼 19 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「おい、金子先生は?」

礼司が心配そうに屡奈に聞いた

「歌舞伎座の中に入っていきました」

「まだ、時間になっていないだろう」

「何か気になるところがあるそうです」

「気になるところ?」

「はい、魔美ちゃんが根付を持って行きましたから」

「そうか。ところで入れるのか?」

「魔美ちゃんがこんばんはと言ったら通してくれたんです」

「あはは、奥の手を使ったな」

「何ですか奥の手って?」

「人の記憶を消せるんだ」

「そ、そうなんですか?」

「ああ、いったい何があるんだ」

礼司は歌舞伎座の屋根を見上げた



「おじいちゃん、何があるの?」

「うん、今度ここが取り壊しになるんだろう」

「そうです」

「古い建物には鬼の封印用のクサビが打ってあるんだ。

 さっきの根付を良く見張っておくんだぞ」

「はい」

二人は二階のロビーをウロウロしていると

魔美の根付が光った

「あっ、光っている」

「おお」

一徳は回りを見渡すと北西の方向の天井にクサビが見えた

「魔美ちゃん、あれだ」

金子は指差すとクサビに鬼の顔が彫ってあった



「そうするとこの建物は?」

「うん、解体する時鬼が出る」

「古い建物はそういう事があるんだ」

「ああ、東京駅前の郵便局もきっと鬼が出るぞ」

「そうか」

「まあ、解体業者にしっかり言っておいてくれ」

「無理だよ。誰も信じてくれないよ」

「ところで、おじいちゃん跡取りは?」

「俺は息子がいないから、徳治の息子にやらせなくちゃいかんのだが

 まだ話が出来ておらん。弟と仲が悪いからな」

「あはは、何とかしてよおじいちゃん」

魔美が一徳の背中を叩いた

「わかった、わかった」



二人は腕を組んで歌舞伎座から出てくると

「おお、どうした?」

礼司はさっきまで一徳を嫌がっていた魔美が笑顔で出てきた

「もうすぐ出てきますよ」

山野が時計を見ながら言った

「うん」

礼司も時計を見ると

「ねね、おじいちゃん離婚したんだって」

「うん、それがどうした?」

礼司は自分の離婚を思い出して

魔美をにらめつけた

「あっ、ごめんなさい」


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