ホラー小説 地獄タクシーⅡ 八章 髪鬼 18 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「金子さん待っていただいて結構ですよ」

「もう一人乗れるんだろう。久しぶりに東京へ行きたい」

一徳はちっとも変人じゃなかった

「は、はい」



一徳はかばんに砥石と小槌を入れて持ってきた

「お父さんやる気満々みたいよ」

魔美が屡奈の腕を肘でついた

「あはは、そうね」

「さあ、行くぞ」

一徳は元気に車の助手席に乗った

「金子さん何があっても驚かないでください」

「あはは、鬼退治の道具を作っているんだから、

 何があっても驚かんよ」

「そうですね。わかりました」

礼司は鬼のノブを魔美から受け取ると

「何だそれ?」

一徳がノブを手にとって見た



「これを車のノブと交換して」

礼司は一徳から取り上げて交換すると

「エンジンをかける」

「ん?」

車のボンネットが光り始め

「行き先を思い浮かべると・・・・・」

礼司が念じると

目の前の景色が変わり歌舞伎座の裏に車が着いた



「到着です」

礼司は一徳の顔を見た

「す、すごい」

礼司は携帯電話を手にとって

「山野さん歌舞伎座の裏に到着しました」

「あっ、すみません。今浜田さんと向っています」

「了解」



助手席から降りて一徳は回りを見回して

声を上げていた

「本当だ、東京に着いた」

「金子さん、中に入ってください。移動します」

「おお」

礼司は一徳を乗せると

車を歌舞伎座の前に移動しハザードランプを点けた

「もう五時か、後六時間か」

礼司がつぶやくと

「あと六時間?」

一徳が不思議そうな顔をして聞いた

「ええ、鬼は十一時から十二時の間に退治しなくちゃいけないんです」

「そうか」

「ハサミを武器に変えるのはどれくらいかかりますか?」

「大体二時間くらいだろう」

「そうなると、あと四時間ですね」

屡奈が後から声を出した

「なんだ?ハサミは見つかったんだろう?」

「いいえ、それが野間多恵子の遺族がわかっただけです

「なんだ、まだ時間がかかりそうだな」

魔美が一徳の態度に腹を立てていた



そこに後から来た車が止まった

「あっ、浜田さんだ」

魔美が振り返って後を見て言った

「ああ」

後の車から降りてきた山野が

礼司のところへ来て窓を叩いた

「今、歌舞伎を観ているので上演が終わる五時四十七分まで待ってください」

「わかった、駐車場へ入れよう」

礼司が山野に言うと

「えっ?誰が歌舞伎を観ているの?」

野間多恵子さんの遺族だろう

礼司は一徳と魔美と屡奈を降ろして駐車場に車を止めて

歌舞伎座の前に戻ると金子と魔美がいなくなっていた


にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ