「はい」
六人は時計を出した。
「三・二・一。八時二五分」
「みんな、この時間を永遠に共有しよう」
「はい」
礼司は隊員一人一人に細かく指示を出して二〇分後
「じゃあ、俺は行くぞ。手はず通り頼むぞ」
「はい、お任せください」
由美がそう言ったのを聞くと、小さい声で礼司が言った。
「たまには俺の墓参りしてくれよ」
「大丈夫です。毎週行っていますから」
と由美が言った。
「あはは。今度こそさよならだ」
五人は夜野に敬礼をした。
礼司と魔美は部屋を出ると、
タクシーが停めてあるところに向かった。
礼司は歩きながら魔美に質問をした。
「魔美はこのために俺に接触してきたのか?」
「ううん、また別な用件」
「そうか、他にも事件があるのか」
「そうだよ。私のいる世界」
「じゃあ、俺は何人いるんだ」
「一人よ。人が死ぬと天国へ行くというでしょ」
「ああ」
「実は、人が死ぬとパラレルワールドを行き来するのよ」
「そうか、復活か。まるでキリストみたいだな」
「そうよ。キリストは三日目だったけどね」
「ん?俺は救世主か?」
「あはは、そうかもね」
魔美は礼司の肩を叩いた
「夜野さんこっち世界のほうがいいでしょ」
「おお、気分がいい」
「戻る?」
「いや、向うの方が気楽でいい。墓もあるしな」
「知っていたの?」
「ああ、由美が毎週こっちの情報を
俺に送っていたんだな。
それを夢に見ていて把握できていた」
「ところで、まかせっきりで大丈夫なの?」
「大丈夫だ。あとは俺が爆弾の
処理をすれば必ずうまく行く」
「すごい自信」
魔美が半分冷やかし気味に言うと、
礼司は先ほどのおどけた顔と
違って真剣な顔になり、
魔美に質問した。
「一つわからない事がある、
俺がこっちの世界で死んだのが一年前だが、
今俺がいる世界では四三年ちゃんと生きていたぞ」
「うん。前も言ったけど、
霊には時間の観念がないから。
去年死んだって、向こうの世界の
四三年前に移動すればそうなるでしょ」
魔美が礼司にそう答えると、逆に礼司に質問した。
「一年前に何かなかった?」
「あったよ、確かに。幽霊を見るようになったし、
変な夢を見るようになった。
しかも、トレーニングが好きになって毎日走っている」
「なるほど」
「ところで、魔美のお父さんは
三年前に亡くなったんだよな」
「うん」