「あれは本物の核爆弾だ」
「やはり」武器に詳しい浜田が言った。
「では、防衛省のB棟を押さえたのは?」
沢村は不思議そうに言った
「たぶん、強行手段を監視するための
航空管制が目的だろう」
「その前に核を押さえるんですね」
山野が言うと
「ああ、できるだけ早く」
メンバー全員が緊張した声で
「はい」と返事をした。
「由美、総理をエアフォースに
乗せて飛ばしてくれ」
「はい」
と言って、由美は受話器を持った。
「魔美。あちらの世界とこちらの
世界の時差は?」
「一二時間よ」
「と言う事は向うは夜の八時ごろか」
礼司は考えて
「魔美、向こうの世界に出入り
できるのはタクシーだけか?」
「ううん、もう一つ方法がある」
「どんな?」
「鬼のいる世界を通ればいいの」
「なるほど」
「うん。鬼が出入りする、
二三時から二四時の間」
「永田町近辺での鬼退治はあるのか?」
「あるけど」
「どこだ?」
「赤坂迎賓館よ」
「あそこは改装中だろう」
「うん、鬼が出てきたのはそれが原因、
鬼を封印していた要石をはずしたみたい」
「OK」
「でも一度鬼の世界に入ったら必ず
退治しなくちゃいけないのよ」
「解かっているよ、ちゃんと退治するよ」
礼司は笑って言った
「みんな、交渉は十二時に行うと
テロリストに伝える」
「はい」
「しかし、どうやって?」
和久井が言った。すると礼司は、
和久井以外のメンバーをにらみつけた。
「お前たちは俺に質問するか?」
「いいえ」と五人は口をそろえて言った。
礼司はうなづいた。一年間居なかった礼司に対しての
五人の信頼感は消えていなかった。
「しかし、あと五時間しかありませんが」
「白尾、あと五時間ではない。その前に二年間あった。
だから時間は充分だ」
「はい」
「川島、SSATを一〇〇人、
ここに集合させろ。何時になる?」
「すでに準備されています」
「一〇〇人を二〇人に別け、
それぞれが指揮をとれ」
「はい」全員が返事をした
「川島由美は都道府県ビル、沢村忠志は防衛省、
山野啓介はジャパンTV、浜田裕也は警視庁、
白尾屡菜は狙撃の準備だ」
礼司に指示された五人のメンバーが、
同時に「はい」とうなづいた。
そして、礼司は由美に近づいて声をかけた。
「由美、一番危険な所に行かせて悪かったな」
「いいえ」
「由美、テロリストの人数は把握できたか」
「はい。新木場の監視カメラ、
他のカメラで確認できました。
八五人です」
「わかった」