地獄タクシーⅡ 四章 武鬼⑤ | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

23:08分


京都駅ホームに下り線が入って来た

佐々は礼司に言われたとおり2号車の前で待った

のぞみの前に立っていると

悲しそうな顔をした女性がステップを降りた

「あっ、佐々さんどうやって?ここに?」

真由美は呆然としていた

「ああ、飛んできた」

「ああ、飛行機ね」


「まあね。さっきは悪かった」

「いいの、私も興奮していたから、

父の事が心配で・・・。」

「うん、実は今日は別な話があって」

「なんなの?」

「い、いや」

「とにかく、お父さんと話がしたい」

「分かったわ」

「うん」


新幹線ホームから二人は駆け下りると

佐々は礼司のタクシーに乗った

「お待たせしました、東山へ行ってください」

「はい、でもどこだ?」

「清水寺の方です」真由美が言った

「夜野さん、国立博物館の近くですよ」

佐々が小声で言った


「ああ、納得。じゃあ行きます」

「夜野さん戸田真由美さんです」

「夜野です」礼司は女性に向かって頭を下げた

「私は魔美です」魔美が頭を下げた

「はい・・・・?」真由美は佐々がなぜ自分を

紹介されたか助手席に少女が乗っているのか

意味が分からなかった


「夜野さんは霊能力者で

地獄タクシー呼ばれる有名な方です」

「そうなんですか?」

「ええ?佐々さんどうしてそれを」

「実は鑑定家の中丸先生の弟子だったんです、

時々先生についてテレビ局へ行きましたよ」

「はあ」


「夜野って珍しい苗字だから覚えていたんですよ」

「地獄タクシーの噂は?」

「キャバクラで」佐々は礼司の耳元で囁いた

「あはは、分かりました」

真由美の家の玄関に着いた

「わあ、大きい家」魔美が言った

「真由美さんの家は大きな建設会社を経営しているんだ」

「わあ、お金持ち」


「ありがとうございます。夜野さん助かりました」

「いいえ」

「そうそう、則国は展示室じゃなくて

地下の倉庫の中にあります」

佐々は閉まりかけのドアから顔を出していった

「えっ?」

「彼、聞いていたの?」

「まあ、いいとにかく急ごう」


「そうだね。もう11時20分よ」

礼司はアクセルを踏んだ

車は5分ほどで国立博物館に着くと

大きな塀が閉ざされ正面には噴水と

その奥にはレンガ作りの建物

右側にはそれよりも近代的な白い建物があった

「例の作戦か?」

「うん」


礼司は鬼のノブを回し鬼の世界に

移動し一度バックし扉にぶつかって

壊し白い建物の前に車を止めると

ノブをはずし車から降りた

「地下だね」

「うん、信じよう」

階段を下りると保管室の前に立った

「さあ、行くぞ」

魔美は礼司の手を握った、そして

礼司は保管室のドアにぶつかった

すると目の前のガラスケースの中

に美しく輝く日本刀が見えた

「こ、これか国宝の刀」

「そうみたい」


「でも参ったな、これは柄(つか)も

鍔(つば)も鞘(さや)もないぞ」

「でもしょうがないよ、ああ人が来たら大変よ」

「ああ、ではちょっとお借りします」

礼司そばに有ったシルク風の布に包んで手に持って

二人は再びドアにぶつかって鬼の世界に戻った。


つづく