地獄タクシーⅡ ③ | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

礼司は松山良子に電話をした。

「あ、夜野さん」

「ちょっとお話がありまして」

「はい?」

「お会いできますか?」

礼司は方南町の喫茶店で良子を待つと、

その姿はすっかりやつれ目がくぼみ、

頬がこけ、肌にまったく艶がなくなっていた


「ビラの反応はありませんか?」

「ええ、まだ何の手がかりも・・・・

早く犯人が捕まると良いのですが」

「いっそ犯人が飲酒運転で事故死

しないかと思いませんでしたか?」

「え、はい。そう思ったこともあります。

でも今は」良子はためらいながら返事をした。


「どうしました?」

「ええ、あれから毎晩変な夢を見るんです、

体が浮いて空を飛ぶような」

「夢?」

「はい、夜突然眠くなって朝起きると

すごく疲れているんです」

「飲み屋街の通行人を見ている

とか?車を探しているとか?」

良子は驚いたように

「は、はいその通りです」

その時、礼司は良子におきている

事が分かった。そしてそれを言って

良いか悩んでいた。

良子の霊園に残してきた残留思念が

生霊となって本人の意思とは関係なく

飲酒運転の人にとり憑き自爆させて

復讐をする。たぶん、

犯人が死ぬまで続くだろう。


「生霊退治か鬼退治はやった事

あるけど・・・」礼司はつぶやいた

「はい?」

「もしかして、車を運転している夢は?」

「それは無いですね」

「そうですか」礼司はしばらく考えて

「松山さん今夜12時いや11時にそこの

交差点に来てもらえますか?ご主人も一緒に」

「はい」

その夜11時、礼司は交差点の手前に

タクシーを止めて松山夫婦の来るのを待った

「お待たせしました、夜野さん」

良子が礼司に声をかけた

「はじめまして、松山です」

「夜野です、車に乗ってください」


二人が後ろの席に乗ると

「ご主人に来てもらったのは、

もうすぐ奥さんが睡魔に襲われます」

「はい、妻がですか?」

和夫は不思議そうに聞いた

「ええ、ご主人はそれを見ていてください」

「はい」

11時半を過ぎると良子は急に睡魔に襲われ、

和夫の方にもたれかかった。




「ご主人」

「はい」

「すぐに奥さんの体から魂が抜けます。

奥さんが苦しがったら起こしてください」

「はい?」

「絶対起こしてくださいよ」

「はい」


礼司は魔美からもらった

ドライビンググローブをはめると

交差点の横断歩道のガードレールの

花のところに2mくらいの黒いモヤが

南の方から飛んできた

「来た」

すると後ろの席で寝ていた良子の口が開き

白い紐が交差点へ伸びて行き

それが渦のように重なりあって

人間の形になろうとしていた。


礼司は白い布袋を持って車を降り

「これか」礼司はその塊の中

に右手を突っ込むと

それは礼司に覆いかぶさり凄い圧力で

礼司の体を押しつぶそうとしてきた

「俺の体に入ろうとしている」


礼司は手にしていた布袋から

ナイフを取り出しホルダーから抜いて

「鬼のノブ力を貸してくれ」

そう言って鬼のノブの感覚を思い浮かべた

すると普通のサバイバルナイフが

金色に輝きだした。


その時、車の中の良子が苦しみだした。

「良子どうした?」

和夫は良子の体を揺り動かした

「良子、良子」

礼司の持っていた金色に輝く

ナイフはスーッと伸びだした

「おっ、ソードバージョン」

そして、そこから一歩はなれて

大上段に構えその塊りを

切る準備をした。


「良子さん早く、早く起きてくれー」

すると、その中から白いモヤが糸を引いて

タクシーに向かって飛んでいった

「おし」礼司はジャンプして上から叩き切った。

すると黒いモヤは逃げるように空高く舞い上がった。

車の中では良子が目を覚ますと礼司が走ってきた

「松山さん、奥さんを降ろしてください」

「はい」

「急いで」

二人が降りると礼司はタクシーをUターン

させ方南通りを新宿へ向かって走らせた

「どこへ逃げた?鬼のノブがあれば」


その時、助手席に置いたソードが

まぶしいくらいに光りだすと

「おい向うの世界へいけるのか」

礼司は左手でソードを握った。


すると、目の前が真っ暗になり

さっきの黒いモヤが小さく凝縮しながら

人の形になって目の前に現れ道路の

真ん中に立っていた。

それは全裸に近く赤銅色で髪を振り乱し

目はつり上がり口は大きく裂け、

爪は猫のように鋭く伸びた鬼のような

形相の女性の姿だった。


「良子さんの生霊め!」礼司は思いっきり

アクセルを踏みそれを轢こうとすると

すばやく右によけた。

タクシーをUターンさせると生霊は

凄いスピードで逃げ出した、

その速さは100キロを越していた


すると助手席に一瞬魔美の姿が見えた

「前と同じでいいのか?」

そう言って礼司は

ギアを一番奥に入れるとロケットの

ように加速した。

生霊に追いついてライトを上向きに

するとそれのスピードが落ちた。


「おお、効果あり」礼司はためらわず

そのままのスピードで生霊を轢くと

風船が破裂したように八方に飛び散った。

すると周りは明るくなり

1159分、任務終了。魔美」

方南町の交差点には

松山夫妻が立って待っていた

「乗ってください」

「はい」

二人がおびえて後ろのシートに座ると

礼司は良子の気持ちを気遣い

「もう大丈夫です」

「はい」

「魔物が奥さんの魂と合体して

鬼となって人を食うつもりだったのです」

「そんな」良子は声を出して泣き出した

「信じる信じないは自由ですが」

「いえ、信じます」

「ありがとうございます」

翌日、水野から礼司に電話があった

「夜野さん」

「おお」

「昨日言われた方南町のひき逃げ事件、

特集を組みますよ」

「おお、サンキュー」

「お母さんのビラ配り、

目撃者が言った黒い車と逃げた

方向で犯人を見つけましょう」

「ありがとう」

「ところで、飲酒運転死亡事故の謎は」

「ああ、あれはもう終わった。ただの偶然だ」

「そうか、残念」

それから数日後、雅也を轢いた犯人が

訳の分からない言葉をつぶやきながら

出頭してきた。その言葉は

「地獄タクシーが迎えに来た」


つづく