獣医鷹子 6 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「お弁当12個持って、9時に出たわ」

12個ですか?」

「うん、12個」

「おかしいな。今日出ているの


10人なんだけどな。

そんな大食いじゃないし」

「そうね。お弁当持って

寄り道はしないわよね」



「みんなで探して見ます。

何かあったかもしれない」

「そうね。私も心当たりを当たってみる」

鷹子の学校は、鷹子の家の

商店街を5分ほど歩くと、

しのばず通りに当たりそれを

右に曲がって六義園沿い7

ほど歩いた場所にあった。


里佳子があちこちに電話をすると、

右前足から血を流したゴンが戻ってきた。

「ゴンどうしたの?

手から血がでてる。見せなさい」

するとゴンは店の外へ逃げた。

里佳子が店外へ出ると

ゴンは「にゃーーん」と長く鳴いて

振り返って歩き出した。



「ゴンどこへ行くの?」

ゴンは血を流しながら、歩き始めた。

「おばさん、学校のまでの

道にはいませんでした」

「あ、いいところへ来てくれたわ、

ゴンの様子が変だから後をつけてみよう」



ゴンは時々後を振り返りながら、

道の真ん中を歩いた。

商店街を出てすぐにゴンは右に曲がり、

2階建てのアパートの前に着くと階段を上がり、


202号室の前で大きな声で鳴き始めた。

中村が階段を上がると、血だらけのドア見えた。


すると、隣の部屋のドアが開いた。

「それ、お宅の猫?」

「あっ、はい」

「今朝からうるさいんだよ。

にゃーにゃー、ガリガリって

ドア引っ掻いて。そこの今井さんが

飼っているのかと思ったよ」

「今井さん、ですか」

「髪の長い、めがねをかけた学生」



「あっ、あの人だ」里佳子は言った

里佳子は玄関のドアを叩いた。

「今井さんさっき出て行きましたよ」

ゴンは血だらけの手でドアを引っ掻いていた。

「すみません。今井さんの

部屋覗けないかな」中村が言うと

「俺の部屋の窓から体を乗り出せば」

隣の部屋の男が言った

「すみません」



耕治は窓から体を乗り出し、

カーテン越しに横になってる鷹子を確認した。

「おばさん、鷹子さんがいましたよ。

警察、警察」

2~3分でしのばず通りの

交番から警察が来た。

事情を話し、部屋を覗き確認した。

「おまわりさん。助けてください」

「いや、今井さんがいないと入れないんだ」

「だって、鷹子に何かあったら

どうするんですか」

「そうです。ドアをぶち破りましょう」


「それは出来ませんよ。容疑が固まらないと、

もし娘さんの意思だったらどうするんですか?

それに上が応援が着くまで待機ということなので」

「自分の意思なわけないでしょう。

弁当を10個も持っているのに。

中にいるのはうちの娘なんですよ」


警察官は悩んで言った

「わかりました。私が責任を持ちます。

君手伝ってくれ」

「はい」中村は答えた。

安アパートの華奢なドアは


2度の体当たりで簡単に破れた。


3人が入るとそこには、

縛られ猿轡をされていた

鷹子が眠っていた。

「鷹子」

里佳子は鷹子をゆり動かし、

ゴンが鷹子の顔をなめた。

すると鷹子はゆっくりと目を開けた

「お母さん」


鷹子は状況を思い出して泣き出した。

まもなくパトカーが到着し、

今井はフィルムと下着を買って

家に戻る所を監禁の罪で逮捕された。

土曜日の夕方、今井は鷹子に弁当2個の

配達を頼んであって、

以前から好意を寄せていた今井は、

鷹子を見て自分の物にしたい衝動にかられ、

殴って気を失わせ裸にして

写真を撮るつもりだった。


「ゴンがあんたの居場所教えてくれたんだよ」

「ごめんね。ゴン。爪が取れるほど

ドアを引っ掻いてくれたんだね。

ありがとう。ゴン」

ゴンは何事も無かったように、

「にゃー」と鳴いた

数日後

「なあ、鷹子。俺、警察官僚になるわ。

あのおまわりさん。懲戒処分受けたんだって。」

「私を助けてくれたのに?」

「緊急性が無かったからだって」

「変だね」

「うん、だから警察官僚になって

おかしな事無くす。

だってかっこよかった。

あのおまわりさん」


「わたしは、獣医になる。

ゴンに助けてもらったから。

いつか動物と会話が

出来るようになりたい」

「ゴンはすごいよ。忠猫だ。

血だらけになっておまえを

守ったんだからな」

「あの時抜けた爪、

お守りにしたよ」

鷹子は赤いお守り袋を見せた


「うん、目標が出来たな。お互いに」

「うん」

つづく