モンブラン完走記 ⑧
上り下りを繰り返しながら、走った。
次のエイドでプロトレイルランナーの横山選手に会った。
かなり疲れていて、苦しそうだった。
カメラで追っかけている人やサポートしている人など
スタッフが何人かいた。
私が先行した。列車を見ることも出来た。
そうして、長い下りに入った。
すると、眼下に街が見え始めた。そのエイドで
聞くと『シャモニーだ』と言うではないか。そしたら、もう少しかな。
と思っていると『ここは、70km地点です』と誰かのサポートをしている
日本人が教えてくれた。
『えー、まだ30km以上あるの』と声が出た。
シャモニーを右手に見ながら、登り始めた。
何とそこに、スタートで一緒に写真を撮ったブラジリアンが
居たのだ。声をかけた。
その後は、雨も上がり走りやすくなった。
途中、男性ランナーが横になっていて付き添っている選手が
いたが、どうも滑落して骨折をしたらしい。
注意をして進まないとこんな事も起きうるのだ。
私も十分注意を払いながら、走った。
最後のエイドにたどり着いたときには、本当に安堵した。
『間違いなくゴールできる』と確信した。
この時点では、陽も高くなり暑くなってきていた。
カッパは腰に巻いて走るようにした。
またまた、ここでもブラジリアンと合った。
彼は、カメラの動画で周囲の観客を撮りながら走っていた。
私には、そんな余裕などなかった。
カメラを出すのさえ嫌になっていたのだ。そのくらい疲れていた。
山裾を縫うようにアップダウンを繰り返しながら、少しずつ
シャモニーに近づいていた。
うれしさで疲れも感じないくらいの所まで来ていた。
後、3kmまで来たときには涙が出そうなくらいだった。
そして、街に入った。
すると、見慣れた顔がコースに飛び出てきてくれた。
何と『鶴橋さん』だ。
『中野先生、お帰りなさい』この言葉が何と嬉しいことか。
『ありがとうございます。何とかやりました』
写真を撮ってくれたので『私のカメラで撮って下さい』と
お願いした。すると、快く引き受けてくれて併走しながら
何度もシャッターを押してくれる。
シャモニーの街中を縫うように、そして、応援者に
帰ってきたのを知らせるように走る。
コースには鈴なりに観客が応援をしてくれ声をかけてくれる。
『ブラボー ブラボー ブラボー』この言葉を聞くたびに
感激する。
ゴールゲートが見えた。
すると、コースの横から日本人が
『これ、どうぞ』と日の丸を渡してくれた。
それを広げて、感激のゴールに飛び込んだ。
嬉しくて、嬉しくて言うことなしだった。
その後のことは、あまり鮮明に覚えていない。
そのくらい感激していたのだ。
鶴橋さんからカメラを受け取ったり、日の丸を返したり
ゼッケンにパンチを入れて貰ったりした。
『フィニッシャーベスト』を受け取り、ゴール後のエイドで
座って、コーラを頂いた。
感激の余韻に浸っていた。
そして、予約していたホテルに帰った。
シャワーを浴びて『御門のゴールを見に行こう』と
思っていた。
そう考えていたら、御門も帰ってきたのでホテルに戻った。
二人とも時間内にゴールできたのだ。
嬉しい限りだった。
ここまで来た甲斐があった。
その夜は、何を食べたかさえ憶えていない。
しかし、気持ち良くシャモニーの夜を迎えたのは間違いない。
つづく