朝晩めっきり秋らしくなってきた或る夜、突然ドアを叩く音。
恐る恐る開けてみると、何やら妙に背の高い細身の女性がげらげら笑いながら立っている。

「あなたのお嫁に来ましたっ!」
女は何が楽しいのか爆笑しながら、バタバタと家に上がり込もうとする。

絶対おかしい、こいつ!
無言で彼女をドアの外に押し出し鍵をかけた。

しかし、いつの間にやら彼女は部屋に上がっていて、室内をあちこち物色している。

…こんなわけのわからない女を部屋に入れとくわけにはいかない。
笑いながらぶんぶん手を振り回す女を、ひきずって外に放り出す。

ところが、ドアを閉めて振り返ると、やはり女は部屋の中にいる。
追い出しても追い出しても中にいる。
 
警察に電話してみたが、あまりまともに取り合ってくれない。
弱り果ててしまったが、意外にきちんとしてるし、殺されることもなさそうだし、ウチには金目のものも無いのでほっとくことにした。


それからずっとその女は部屋にいた。
その内、洗濯やら料理やらするようになったが、皿は割るし、色物を塩素漂白するし…やめさせた。


この秋はゲリラ豪雨やら台風やらに加え、どうかしたみたいに仕事が忙しく、謎の同居女の相手をするのも面倒くさく、ほぼほったらかしだった。
傍から見れば相当異常な暮らしだが、傍の人には彼女が見えないようだった。
 
とにかく何だか忙しすぎて、どうでもよかった。



その日は残暑というか夏の戻りというか、えらく暑かった。
虫の声が途切れ、蝉の声がうるさかった。 
今年は秋が早いと思っていたが、まだ九月。
昼間30℃超える日があっても全然不思議じゃない。

あれほどうっとおしかった暑さがなんだか懐かしかった。

ふと、これまで放置していた例の押しかけ女房に情がうつる。
今日ならちゃんと話を聞いてやれそうな気がした。
いつも部屋の隅でごろごろしてるでかい女に目をやった…

 

女はいなかった。
夏が戻るのと一緒に、女もいなくなってしまっていた。
 
 


…これは妖怪あきよめである。
正体はよくわからない。
秋の訪れと共に現れ、暑さが戻ると消え去る奇妙な妖怪だ。


一時的に暑くはなっても、一雨ごとに確実に秋になる。
次に虫の音が聞こえたら、もう蝉の声は聞こえないのだろう。

そう言えば、去年現れた妖怪なつよめは消えてそれっきりだった。

あきよめは…






秋が深まったら帰ってきてくれるのだろうか?






ではまた。



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