鳥のように軽やかに手を降って歩いてたら腕時計をドアにぶつけた。
それほど強くぶつけたわけではないので気にしてなかったのだが、何かおかしい。
違和感がある。
良く見てみた。


…秒針がもげてガラスの中に転がっている。
この腕時計はソーラー電波時計で、半永久的に動き続けるというのが宣伝文句だった。
その半永久の命がちょっとした衝撃であっさり失われた。
星野鉄郎は永遠の命、機械の身体を求めて999に乗った。
しかし、機械の身体でもエネルギーが無くなれば動けないし、壊れれば死ぬ。
それよりなにより、限りある命だからこそ人は生きるのだということに彼は気づいた。
ソーラー電波の半永久時計もいつか止まる。
ぶつけなくても、半永久には程遠い短時間の内におそらくメカニズムにガタがくる。
メカが壊れなくても太陽電池だって寿命があるし、時報電波が止まれば正確な時刻は刻めない。
…そう、私は鉄郎に後れをとること数十年、同じことに気付いたのだ。
ふと見ると、秒針こそ無いが腕時計はしっかりと時を刻み続けていた。
こいつ、秒針がもげても生きているのか…
私も生きよう。
通販で7割引で買ったELGINよ、
生きろ!
その限りある命を輝かせるのだ!
…いつの日か本当に命が尽きるまで。
…そう、もげた秒針が長針か短針にひっかかってどうにも動かなくなる日まで。
じゃまた。