節電と自粛でただでさえ夜櫻に人影が無い。
その上冷たい雨が降りしきり、全ての人から忘れ去られたような公園の櫻。
 
 
…いや、誰かいる。
傘もささずに和服の女性が、寂しい櫻の樹の下に立っている。
見れば、年の頃なら二十過ぎの痩せ細った別嬪。
しかし、遠目にも膝から下が霞んでおぼろげだ。
さては浮かばれぬ女が迷って出たか、はたまた狐狸の類いかと思うものの、何故かふらふらと女の方へ歩を進めてしまう。
 
傍に寄ると、女は思った以上に美しく、その潤んだ瞳に引きずり込まれそうになりながら、これはもののけに相違ないと己に言い聞かせ、必死にこれ以上近寄らぬ様に歯を食いしばった。
 
 
ふと、女がうつむく。
その目から泪がこぼれた。
雨に濡れながらも、はっきりわかるほどの大粒の泪。
 
何か、とてつもなく悪いことをした気になって、つい声をかけそうになる。
すると女はゆっくりと顔をあげ、泪を流しなから微笑んだ。
 
 
雨に濡れくすんでいた櫻の花が、一斉にライトアップされたかのように輝いた。
女は、私にとり憑くことも、私をとり殺すこともなく、すうっと消えた。
 
いつしか雨はあがっていた。
遠くの街灯にうっすらと照らされた櫻は、まるで今花開いたばかりのように見えた。

 
 
 
これは妖怪櫻雨乙女(サクラメオトメ)である。
平たく言えば櫻の花の精だ。
特に悪事を働くことは無いと言う。
 
 
 
 
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