居酒屋のカウンターで、焼き魚なんぞつまみに軽く一杯やってると、いつの間にか左隣に痩せ細った少女が座っている。
親の姿は見えない。
親の姿は見えない。
看板間際の居酒屋と少女の組合せは異様で、悪酔いして幻でも見てるのかと思うが、確かにそこにいる。
しまいには、にこにこしながら焼き魚の皿に載ったレモンの切れ端をつまんだりするから、いよいよ幻ではない。
やおら、少女はその小さな指でレモンを絞り、皮から弾けて飛んだ雫が私の目を直撃した。
思わず目を閉じ、おしぼりで目をこすり、次に開いた時には少女は影も形もない。
これこそ、妖怪柑橘娘の仕業である。