電車で背伸び気味にやや遠目の吊革をつかんでいた。
突然私の手の上に人の手の感触。
リクルートのような地味なスーツの女の子だった。

混んでるとは言え、普通ではないシチュエーション。
とりあえず、彼女の手の下で吊革を握る自分の手を放そうとしたのだが、かなり強目に握られていて、振りほどくのも難儀だった。
顔を見ると、美人ではないが、やや淡白な、あどけなさの残る清楚な女の子。

聞いてみた。
「吊革譲りましょうか?」
「…」
「私、手、放してもいいですか?」

「…そのままであと少し」
「?」
「…ごめんなさい」

しかたないので、次の次の次の駅で、涙目の彼女が無言で降りるまで、手を重ねたままの私だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
…どこまでが事実でどこからが妄想かは貴方の想像次第。
 
 
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