とある病院でのホントの話。

その病棟には、お婆さんが入院している。
仮に松本さんとしておく(亀井、もとい仮名)。

松本さんは御年80超。
怪我は腕だけで、足腰はいたって元気。
ただ、そろそろ、ちょと頭の方が幸せな領域に入りつつあった。

松本さんは、深夜に病棟内を意味もなく徘徊する。
世の徘徊老人と同じ。
しかし、仮にも怪我人で、おまけにどえらい深夜に病棟内をブツブツ言いながら歩き回られては困るので、いつも当直の看護師さんに見つかっては、こっぴどく怒られてた。
松本さんのすごいところは、徘徊の理由は自分でもわけがわからなくなってるのに、怒られた時の言い訳は手を変え品を変え多彩なのだった。

この前の深夜、またも松本さんは深夜徘徊し、看護師さんに見つかった。

「松本さん!だめでしょ、こんな夜中に何やってるの!?!」
松本さん、怒られてはっとなる。
怒られたもんで、必死に言い訳を探した揚句…

「わ、わしゃぁ、松本さんではありません!」
「何言ってるの、松本さん!?」
「わしゃぁ、幽霊です。」


…この病院には幽霊が出るという。


もしも許されるなら、同じセリフを加藤茶に大きな声で言ってほしい。
「とんでもねぇ、わしゃぁ神様だよ」と同じ調子で。