外勤中に、とある文京区のトンカツ屋で昼食を取った。
(そこはとあるトンカツ屋…つーとこですかい)

いつもコンビニ弁当か立ち食い蕎麦なので、たまには大盤振る舞いである。
で、超大盤振る舞いで700円のサービストンカツ定食を食していたところ、店の電話が鳴り響いた。

マスター、というかオッサンが電話をとり、叫んだ。
「こちとら商売やってんだ、迷惑なんだよ!!電話なんぞで手ぇ抜いた商売しやがって!
二度とかけて来やがったらただじゃおかねーからな!!!」

…不動産かなんかの勧誘の電話だったらしい。
トンカツ口にくわえてあっけに取られている私と目が合ったオッサンの弁。

「いや~、お客さんのいるときはおとなしくしてるんだけどね、普段なら怒鳴りつけてますよ(笑)」
いや~、十分すぎるくらい怒鳴りつけてたって。

「日に2度も3度もかかってきやがるんですよ、商売やってんだから出ないわけにいかね~し、お客さんいると大声出すわけにも行かないから困っちまいますよね」
大声出てますがな。

私も、会社で勧誘電話のしつこさに「ワタクシは退職いたしました」とか「ワタクシは昨日自殺しました」とか無茶を言って断ってるもんだから、オッサンの気持ちはよくわかり、まるで居酒屋の大将とカウンターの常連客のようにしばし会話。

このオッサンであるところのトンカツ屋のマスター、気持ちいいくらいガラッパチで昨今の世の中を嘆く。

「こないだ、ウチの息子のフリして振り込め詐欺の電話がかかってきたんだけどね、30過ぎて困って親に電話かけてんじゃねえ!って言ってやりましてね。
え?ホントに息子かと思ったのかって?なわきゃないですよ。だって息子は二階で寝てたかんね。
おもしれえのと腹立ったので、相手がおろおろになるくらい怒鳴ってやりましたよ。」
日本中このオッサンだったら、振り込め詐欺も架空請求も起こらなさそうだ。

「昔、ウチの息子が中学ン時に万引きやらかしましてね。
スーパーだかデパートだかから電話かかってきたんすがね、ウチではきちんと教育はしてるつもりだが、それでも言うこときかねえ馬鹿は子供だろうがなんだろうが盗人だ!
警察でも鑑別所でも勝手に入れてくれって、まかせたって。
そしたら店の子が弱っちまって、「事を荒立てるとこちらも大変だから何とか引き取ってもらえないか」ってね。
そこまで言われりゃこっちも人の親だ。頭下げて連れて帰って、それからしこたまぶんなぐってやりましたよ。」
…おかげで、今息子さんはりっぱな経営者だそうである。

平日の昼間っからこんなオッサンと出会えて良かった。
オッサンの言ってることやってることの良し悪しは置いといて。
(ちなみにお店に客は私一人であった)

一期一会である。
さらなるオッサンとの出会いを求めて、予告通り週末は旅に出る。


…なんだか天気は悪そうだが。