歌舞伎役者の坂東三津五郎さんが今年発症し、アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズ氏の死因となった、すい臓がんの「登録制度」の記事である。
根治がきわめてむずかしい、すい臓がんは、「遺伝性」がほかのがんと比較して突出していると見られており、米国では、1994年から、「登録制度」を設けて、集中的に研究し、早期発見や効果的な治療の開発に役立てようとしてきた。
今年7月、日本膵臓癌学会もようやく会見を開き、今月からこの「登録制度」を創設して、登録を受け付ける発表をしたというが、今回の記事の内容だった。
ところが、「準備が進んでいない」との理由で、登録開始は、「来年4月以降」に延期されてしまったのだ。20年も前に登録制度を開始した米ジョーンズホプキンス大学病院に研修者を送るのも、来年1月とのこと。
「遅過ぎるだろう」。
この感想に尽きる。日本ですい臓がんで亡くなる方々は、増加の一途をたどっており、2000年代前半の2万人強から、2011年には、2万8829人と、3万人に届こうとしている。そして、発症が判明した方の70~80%が5年以内に亡くなっている(今年亡くなった俳優の夏八木勳さんはわずか半年で)という、患者を「絶望させる」がんでもある。
日本のがん医療は、「個々人」に関しては、画期的な基礎研究の成果を発表したり、卓越した技術を有する外科医を輩出したりするなど、相対的には、世界有数の水準に到達している感がある。
だが「組織」に関しては、「機敏に集中的に対応」しているとはいいがたく、「基礎研究」が「実用」に結びつくのが遅かったり、結びつかないことが多々ある。
今回の「家族性膵癌登録制度(学会のHP)」の延期もそのことを象徴する1件ではなかろうか。(なお今号の特集記事の一つ、「コカミドDEAの発がん性に注意すべし」で、一部「コミカド」となっているのは、単なる誤植です)。
