さて、ではこの世界中を震撼とさせた出来事…いやもはや事件と言っても過言ではないことが、どのようにして起こったのかさくっと検証していきたいと思います。

 明確な事の発端は、今年のマレーシアGP・セパンサーキットでのレースウィーク初日。
木曜日のプレスカンファレンスでした。

記者からのフロア質問で、「フィリップアインランドでの実に52回ものオーバーテイクのような展開が、セパンでも起こりうるか?」という質問に対して、ロッシがこう答えたのです。

「(ビデオを)後から見ると、
  マルケスが僕ら(ロッシとノネ)を翻弄していたなというのが
  わかったんです。
  彼の狙いはホルヘを先行させて、僕よりもポイントを獲得させるという事だったん
  だと。
  だから、フィリップアイランドからホルヘに"新しい味方"ができたってこと。
  …それはマルクなんだけど」。

…はい?
あんだって?
そこにいる誰もが一瞬、耳を疑ったと思います。

もともとロッシは早口のイタリングリッシュでよく喋る。
ジョークを交えながら、メディアを、時に辛口のライバルたちをいなしながら”うまいこと”やれる人なんです。
この時も最初はいつものジョークだろうと皆思ったに違いありませんでした。
両隣のホルヘもマルクも
「始まったなwオッサン!w」的な苦笑いを浮かべていましたし、
プレカン司会のニック・ハリスですら、
「もぉ~マルクのおかげでホルヘに追いつけなかったじゃぁ~ん」的ニュアンスと受け取っていたと思います…最初は。

しかしもう1分も経たないうちに
どうやらこれは違うらしい
ということが分かり始めました。

私には喋り出しから「ん?」と感じたんですね。
よぉし言うぞぉと軽く息を吸って話し始めたというか。
そしてマルクの方を見ない。
いつものジョークならマルクを見ながら笑顔で話すだろうに、その笑顔も引きつっているし、何より目がマジ。
最後の「それはマルクなんだよ」とチラリと彼に視線をくれたところで、さすがのマルクも顔色が少し変わりました。

その後「マルク、ホントに彼らを翻弄したの?ホルヘをを勝たせようとしているの?」という遠慮ナッシングな赤裸々質問に

「もちろんそんな事はないよ!ホルヘを助けるつもりなら最終ラップで抜こうなんてし
 ないし、限界までプッシュしないですよ。
 なぜそのように言われるのかはわかりません」

と当然のことながら否定。しかし頬がかすかに紅潮していて明らかな動揺が浮き彫りに…。

ただならぬ緊迫感が漂う中、ホルヘの気の利いたジョークが唯一の救いになり(?)
なんとか無事にプレカンは終了したのです。

が、嵐はそのあとにやってきた。

メディアスクラムでロッシがさらにぶっちゃけ始めたのですな。

「マルケスは明らかに誰よりも速いペースで走っていたんだ。
 でも僕ととイアンノーネを邪魔するためにペースをわざと落としたのさ。
 おかげでホルヘには逃げられてしまったよ!
 (中略)要はマルケスは僕を邪魔するためにわざとやったってことさ!」

プレカンの時よりも激しい口調で、そしてわざわざ持ち込んだフィリップアイランドのタイムシートを記者に示しながらの力説…
「な?どう見てもそうだろう?」といわんばかりの。

当然のことながらマルクのレスポンスは
「なぜそんなこと言うのかな…」という少々切ないものに。
だって、「マルクが僕に憧れたてなんてわかりゃしないよ」的なことまで言われ、少年の日の思いまで否定されてしまったんですからね。
ホルヘはホルヘで
「どしたんかな、オッサン…いつもはあんなんじゃないよね?」と困惑気味。
(後々ホルヘは軽く噴火を起こすことになるんですが、もうこの頃からマグマ溜りがボコボコいいだしていたようですな…)

この経緯はメディアによってリリースされ、もう世界中のファンがそらもう大騒ぎさww

いったいロッシはどういうつもりで発言したのか。

多くのメディアやファンが推測したのが、この発言はすなわちロッシお得意の”心理作戦”だというものでした。
かつてセテやビアッジ、ストーナーに仕掛けたように、勝利のためにはできることを全部するロッシのメンタルストラテジーということでしょう。

・・・

ん?でもそれおかしくない?
直接タイトルチャレンジャーではないマルクに仕掛けるより、ホルヘに仕掛けて然るべきでは?
マルクに仕掛ける意味ないっすよね?
マルク経由でホルヘに?ったってそんなまどろっこしい作戦いらないし。
やはりマルクに対して

「邪魔すんなよ」というロッシの心からの本音ということになる、と。

これに対しては賛否両論極まれりでした。
チャンピオンに王手をかける男が言うことか?
それともそうだからこそ出る発言なのか?

私的にはこれは『NG』だと思います。
確かに直接「邪魔するな」という言い方はしていないにしても、主旨はまさにそれを示していると思うし、マルクに言った言葉であるにしても、結果的にはチャンピオンシップ争いから離脱している他ライダーすべてに圧力をかけることになる。
心情的にはそう思うだろうと理解できても、公的な場で発言することではないだろうと。

でもそんなことはロッシだってわかってると思うんですよね。
いくら彼が勝つためには口撃も厭わない人だとしても、そこまであからさまにいっちゃぁカッコ悪いよ、くらいはわかっているはずなわけで…

 つまりロッシは追い詰められていたってことなんでしょうね

さしもの絶対王者も今年のこの戦いはキツイ。
しかし、チャンピオンになれる最後のチャンスかもしれない。
直接のライバルであるホルへに対してアドバンテージを持ったまま最後の戦いをするためには、その邪魔になる脅威をなんとしてでも退けておかねばならぬ。
心理作戦というよりも、絶対に負けるわけにはいかないんだ!という状況に追い込まれていたがゆえの本音吐露であり、形振りかまわずの口撃だったと解釈しています。


毎年イギリスで開催される『グッドウッドフェスティバル2015』のインタビューでロッシは

「引退するまでにマルクに勝ちたい」

と、10歳以上年下の若武者に遠慮ない闘争心を向き出しに答えていたように記憶しています。
ある意味チャンピオンシップを争うホルヘ以上に意識する存在のマルク。
確かにマルク・マルケスというライダーの才能は恐ろしいほどのものだし、リビングレジェンドたるロッシですらその存在を恐れるのは無理からぬこと。

しかしそのマルクが自分の邪魔をしてるんだと公言するに至ったまで、どういう経緯があったのでしょうか。
次回はそれについて書きたいと思います。