さて2015年シーズンが開幕し、ヴァレとマルクの関係に大きな変化が現れました。
それは単純明快。昨シーズンまではヴァレがマルクを追う立場でしたが、その立場が逆転したことです。
2013年~14年は停滞していたヤマハ勢でしたが、 ドットーレの面目躍如でようやくマシン開発が結実。
特にヴァレは初戦カタールからコンスタントにポディムをゲットするかつての王者の強さを取り戻しました。
昨シーズン中盤までは「ヴァレももう引退か…」とまことしやかに囁かれていた事が嘘のように、第3戦アルゼンチン戦までに優勝2回を決める勢い。
これはイケるかも。
ロッシファンは色めきたち(私はホル派w)、当のヴァレだってそう思ったに違いありません。
強敵マルクは第2戦アメリカズGPでこそ優勝を決めたものの初戦カタールGPでは5位に沈み、第3戦アルゼンチンでは転倒リタイヤという不安定さを露見させていますし、チームメイトのホルヘは何かとトラブル続きの成績不振。
さらにはダニまでもが腕上がり手術のために戦線離脱し、この時点では向かう所敵なし状態だったのですから。
特にヴァレを勢いづけたのは第3戦アルゼンチンGPだったでしょう。
スリッピーな路面とそれをさらに難しくする路面温度の変化。そこにブリヂストンが配給した新たなタイヤアロケーションが、ただでさえ困難なこのコースにタイヤチョイスという悩ましさを加えてしまい、レースが荒れるのは必須と予想されました。
しかしスタート後の前半こそは各選手入り乱れたものの、すぐさまマルクがトップに躍り出て、中盤までは後続に2秒以上のアドヴァンテージを持つ展開に。
ギャップを保ちながらこのままマルクの逃げ切りか・・・と思いきや、後半に入り当のマルクのタイヤが消耗したのかラップが落ち始めたのです。
そんな中、レースウィークの早い段階でチョイスしたエキストラハードのリアタイヤを辛抱強くマネジメントをしていたヴァレが怒涛の追い上げを開始。
そしてとうとう残り2週でマルクをロック・オンし、第5コーナーでオーバーテイクを決めます。しかし次の第6コーナーで衝撃の展開が待っていました。
コーナーに入る少し手前でヴァレはちらっと振り向いてマルクを確認してるように見えるんですね(本人は後に否定)。
そして彼がまだあきらめていないことを知り、マルクのラインを阻むようにマシンを倒しこみます。
そしてヴァレのリアホイールがマルクのフロントホイールと接触し、マルクは転倒。マルクはレースに復帰することができずあえなくリタイヤ・・・
結果ヴァレは優勝。早くもシーズン2勝という大収穫を得たのでした。
第6コーナーのヴァレとマルクの接触はレース・ディレクションの審議の対象となりましたが、レースアクシデントと認定されお咎めなし。
ヴァレにとっては優勝した上に、何かとカンに障る(?)マルクを完全封殺した会心のレースとなったわけです。
この時のマルクの心境はどうだったんでしょうか?
「レースではよくあることだよ。いつでも勝てるわけじゃないしね」
とサワヤカにさらりと流す一方で、
「まったくもってヴァレは僕のお手本だよ!彼は本当にいろんなことを教えてくれるからね」
と、何やら意味深な発言をしています。
やはりハイパー負けず嫌いな彼にとっては、抜かれた挙句に転がされたという屈辱的なことだったのか・・・
しかしこの時点でのマルクにはそこまでのディープな感情はなかったように思います。
が、一方でヴァレにとっては
「やってやったぜ・・・」
という思いがあったように思えるんですよね~
やはり第6コーナーでの『チラッ』が、ヴァレの明確な意志を示すものではなかったかと。
このバトルがその後のヴァレの懸念の種になるとは・・・この時点では誰も予想だにしなかったわけで。
この後、第4戦スペインGPヘレスから第7戦カタルーニャまではホルヘが調子を取り戻し、破竹の4連勝を遂げました。
マルクはといえば第6戦ムジェロ、第7戦カタルーニャを連続転倒リタイヤという、ディフェンディングチャンピオンとしては不本意なリザルトが続きます。
対してヴァレは連続表彰台をゲットする抜群の安定感。
チャンピオンシップポイントでホルヘに猛追されつつも、サマーブレイク前の前半ですでにシーズンチャンピオン奪取の可能性を色濃いものにしていったのです。
そしてサマーブレイク前に、ヴァレとマルクの変化する関係性を決定づけたもうひとつの山場がありました。
そう。いわずとしれた第8戦オランダGPアッセンTTです。
『何かが起こる最終シケイン』で、何かが起こってしまいました。
予選から調子がよくポールポジションからスタートを決めたヴァレが、前半から中盤にかけてレースを支配します。
が、終盤20周目にマルクがトップに浮上。激しい競り合いになりましたが残り3周の時点で再びヴァレがトップを奪い返します。
そして運命のファイナルラップ。背後まで迫っていたマルクが最終シケインでヴァレのインに飛び込みふたりは接触!
マルクは大きく体勢が崩れコースアウト、ヴァレはグラベルに弾き出される形で反対側にコースアウトしますが、なんとショートカットでコースへ戻りそのままゴールへ飛び込んでしまいました。
ええええ?これってアリなの?
観客もマルクも目が点状態になる中、ヴァレは観客の所まで走って行き派手に優勝をアピール。
うまい!私は思わず唸ったもんです。
そう、ここらへんが彼のうまいところなんですよね…
審議になる前に観客を巻き込んで、自分の優勝を既成事実にしてしまえ!みたいな。
当然、マルクサイドからの要請もあり、このヴァレの動きに関してレースディレクションは審議をしました。
しかしヴァレのショートカットは接触した事によるアクシデントで不可抗力であり、マルケス選手もコースアウトをしていたので、両者ともにペナルティなしという裁定になったのです。
この事態にさすがのサワヤカ青年マルクも怒り心頭になったんでしょうね。
「ショートカットしたのにペナルティないんだ?(あれがいいなら僕もやろうかな)
今日はまたヴァレから新しいこと…モトクロス走法を学んだね」
「実質勝ったのは僕だから」
と、キラキラ笑顔で毒を吐いておりましたw
一方ヴァレもかなりシニカルなコメントを。
「ショートカットしたのはそもそもマルクがぶつかってきたからでね。透明人間だと思ってるんじゃないの…こっちを」
こはい。りゅ、こはい!www
このショートカットに関しては、ヴァレは最終シケインでマルクが飛び込んでくることを予想していて、FP時にグラベルトップを走る練習をしていたとか、計画通りの犯行(ジョークですよw)だった等いろいろな噂も飛び交い…(汗)。
今までは仲のいい兄弟みたいな二人に見えたけど、やはり勝負の世界にそんなことありえないのね…ということを実感してしまった一幕だったのです。
その後サマーブレイクに入り、この時点でのワールドスタンディングはヴァレ:179点、ホルヘ:166点、マルク:114点。
ホルヘとホンダ勢が復調してきたこともあり大きなアドバンテージではないものの、ヴァレは開幕から途切れることなくポディムをゲットするコンスタントさでやはり優勝候補筆頭。
さぞかし晴れやかな気分でバカンスを迎えたことでしょう。
しかし、たぶんもうこの辺りから青空の遠く向こうです黒い叢雲が生まれていたのだと思います。
さすがのリビングレジェンドでもシーズン優勝が現実味を帯びてくれば来るほど、いやそう簡単にはいかない、でも絶対逃したくない…そんな気持ちと不安を抱えるはずです。
たぶん、これが最後のチャンス。
ヴァレ自身がきっとそう思っていたに違いないでしょう。
久しぶりに体感する追われる者にしかわからない恐怖。
真夏の太陽の下で楽しみながらも、そんなプレッシャーが少しずつ、少しずつ彼を苛み始めていたのだと思います。
それは単純明快。昨シーズンまではヴァレがマルクを追う立場でしたが、その立場が逆転したことです。
2013年~14年は停滞していたヤマハ勢でしたが、 ドットーレの面目躍如でようやくマシン開発が結実。
特にヴァレは初戦カタールからコンスタントにポディムをゲットするかつての王者の強さを取り戻しました。
昨シーズン中盤までは「ヴァレももう引退か…」とまことしやかに囁かれていた事が嘘のように、第3戦アルゼンチン戦までに優勝2回を決める勢い。
これはイケるかも。
ロッシファンは色めきたち(私はホル派w)、当のヴァレだってそう思ったに違いありません。
強敵マルクは第2戦アメリカズGPでこそ優勝を決めたものの初戦カタールGPでは5位に沈み、第3戦アルゼンチンでは転倒リタイヤという不安定さを露見させていますし、チームメイトのホルヘは何かとトラブル続きの成績不振。
さらにはダニまでもが腕上がり手術のために戦線離脱し、この時点では向かう所敵なし状態だったのですから。
特にヴァレを勢いづけたのは第3戦アルゼンチンGPだったでしょう。
スリッピーな路面とそれをさらに難しくする路面温度の変化。そこにブリヂストンが配給した新たなタイヤアロケーションが、ただでさえ困難なこのコースにタイヤチョイスという悩ましさを加えてしまい、レースが荒れるのは必須と予想されました。
しかしスタート後の前半こそは各選手入り乱れたものの、すぐさまマルクがトップに躍り出て、中盤までは後続に2秒以上のアドヴァンテージを持つ展開に。
ギャップを保ちながらこのままマルクの逃げ切りか・・・と思いきや、後半に入り当のマルクのタイヤが消耗したのかラップが落ち始めたのです。
そんな中、レースウィークの早い段階でチョイスしたエキストラハードのリアタイヤを辛抱強くマネジメントをしていたヴァレが怒涛の追い上げを開始。
そしてとうとう残り2週でマルクをロック・オンし、第5コーナーでオーバーテイクを決めます。しかし次の第6コーナーで衝撃の展開が待っていました。
コーナーに入る少し手前でヴァレはちらっと振り向いてマルクを確認してるように見えるんですね(本人は後に否定)。
そして彼がまだあきらめていないことを知り、マルクのラインを阻むようにマシンを倒しこみます。
そしてヴァレのリアホイールがマルクのフロントホイールと接触し、マルクは転倒。マルクはレースに復帰することができずあえなくリタイヤ・・・
結果ヴァレは優勝。早くもシーズン2勝という大収穫を得たのでした。
第6コーナーのヴァレとマルクの接触はレース・ディレクションの審議の対象となりましたが、レースアクシデントと認定されお咎めなし。
ヴァレにとっては優勝した上に、何かとカンに障る(?)マルクを完全封殺した会心のレースとなったわけです。
この時のマルクの心境はどうだったんでしょうか?
「レースではよくあることだよ。いつでも勝てるわけじゃないしね」
とサワヤカにさらりと流す一方で、
「まったくもってヴァレは僕のお手本だよ!彼は本当にいろんなことを教えてくれるからね」
と、何やら意味深な発言をしています。
やはりハイパー負けず嫌いな彼にとっては、抜かれた挙句に転がされたという屈辱的なことだったのか・・・
しかしこの時点でのマルクにはそこまでのディープな感情はなかったように思います。
が、一方でヴァレにとっては
「やってやったぜ・・・」
という思いがあったように思えるんですよね~
やはり第6コーナーでの『チラッ』が、ヴァレの明確な意志を示すものではなかったかと。
このバトルがその後のヴァレの懸念の種になるとは・・・この時点では誰も予想だにしなかったわけで。
この後、第4戦スペインGPヘレスから第7戦カタルーニャまではホルヘが調子を取り戻し、破竹の4連勝を遂げました。
マルクはといえば第6戦ムジェロ、第7戦カタルーニャを連続転倒リタイヤという、ディフェンディングチャンピオンとしては不本意なリザルトが続きます。
対してヴァレは連続表彰台をゲットする抜群の安定感。
チャンピオンシップポイントでホルヘに猛追されつつも、サマーブレイク前の前半ですでにシーズンチャンピオン奪取の可能性を色濃いものにしていったのです。
そしてサマーブレイク前に、ヴァレとマルクの変化する関係性を決定づけたもうひとつの山場がありました。
そう。いわずとしれた第8戦オランダGPアッセンTTです。
『何かが起こる最終シケイン』で、何かが起こってしまいました。
予選から調子がよくポールポジションからスタートを決めたヴァレが、前半から中盤にかけてレースを支配します。
が、終盤20周目にマルクがトップに浮上。激しい競り合いになりましたが残り3周の時点で再びヴァレがトップを奪い返します。
そして運命のファイナルラップ。背後まで迫っていたマルクが最終シケインでヴァレのインに飛び込みふたりは接触!
マルクは大きく体勢が崩れコースアウト、ヴァレはグラベルに弾き出される形で反対側にコースアウトしますが、なんとショートカットでコースへ戻りそのままゴールへ飛び込んでしまいました。
ええええ?これってアリなの?
観客もマルクも目が点状態になる中、ヴァレは観客の所まで走って行き派手に優勝をアピール。
うまい!私は思わず唸ったもんです。
そう、ここらへんが彼のうまいところなんですよね…
審議になる前に観客を巻き込んで、自分の優勝を既成事実にしてしまえ!みたいな。
当然、マルクサイドからの要請もあり、このヴァレの動きに関してレースディレクションは審議をしました。
しかしヴァレのショートカットは接触した事によるアクシデントで不可抗力であり、マルケス選手もコースアウトをしていたので、両者ともにペナルティなしという裁定になったのです。
この事態にさすがのサワヤカ青年マルクも怒り心頭になったんでしょうね。
「ショートカットしたのにペナルティないんだ?(あれがいいなら僕もやろうかな)
今日はまたヴァレから新しいこと…モトクロス走法を学んだね」
「実質勝ったのは僕だから」
と、キラキラ笑顔で毒を吐いておりましたw
一方ヴァレもかなりシニカルなコメントを。
「ショートカットしたのはそもそもマルクがぶつかってきたからでね。透明人間だと思ってるんじゃないの…こっちを」
こはい。りゅ、こはい!www
このショートカットに関しては、ヴァレは最終シケインでマルクが飛び込んでくることを予想していて、FP時にグラベルトップを走る練習をしていたとか、計画通りの犯行(ジョークですよw)だった等いろいろな噂も飛び交い…(汗)。
今までは仲のいい兄弟みたいな二人に見えたけど、やはり勝負の世界にそんなことありえないのね…ということを実感してしまった一幕だったのです。
その後サマーブレイクに入り、この時点でのワールドスタンディングはヴァレ:179点、ホルヘ:166点、マルク:114点。
ホルヘとホンダ勢が復調してきたこともあり大きなアドバンテージではないものの、ヴァレは開幕から途切れることなくポディムをゲットするコンスタントさでやはり優勝候補筆頭。
さぞかし晴れやかな気分でバカンスを迎えたことでしょう。
しかし、たぶんもうこの辺りから青空の遠く向こうです黒い叢雲が生まれていたのだと思います。
さすがのリビングレジェンドでもシーズン優勝が現実味を帯びてくれば来るほど、いやそう簡単にはいかない、でも絶対逃したくない…そんな気持ちと不安を抱えるはずです。
たぶん、これが最後のチャンス。
ヴァレ自身がきっとそう思っていたに違いないでしょう。
久しぶりに体感する追われる者にしかわからない恐怖。
真夏の太陽の下で楽しみながらも、そんなプレッシャーが少しずつ、少しずつ彼を苛み始めていたのだと思います。