※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ニコラスの巻」の次。「トンニャンの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

 

 

 

「いつか、見た・・・って何?」
「コーラ、聞いてたの?」
チェリーが振り返る。
「同じ所に住んでるのよ。通りかかれば、聞こえるわ。何、トンニャン。二人だけの内緒話はずるいわ」
トンニャンが何か言いかけたが、コーラはその口を人差し指で押さえる。

「いつもの、大人ぶった言い方でごまかしても駄目よ。私は悪魔なんだから。何でもありなんだから。チェリーとは違うわ。悪魔として恥ずかしくないように、なんて言葉、この世に存在しないわ」
トンニャンが肩をすくめた。
「そうね、コーラ。悪魔には、ルールすらないのね。チェリー、話してあげたら。リオールが現れた時の事」
トンニャンの言葉を受けて、チェリーはコーラがニコラスに付きまとわれていた時、トンニャンがいち早く、とりついているのをリオールと見抜いた時の話をした。

 
「見たの?トンニャンが男になった姿を?」
チェリーが首を縦に振る。
「なあんだ。そんな事か」
「そんな事って何よ。コーラは見た事・・・」
「あるわよ」
虚をつかれて、チェリーは言葉を失う。

「私、ルシファー様の城に一年近くいたのよ。トンニャンが一度も来なかったと思うの?」
チェリーはあっ、という顔をした。
「何度も、と言っておくわ」
「何度も・・・」
チェリーはトンニャンを振り返る。トンニャンはため息をついた。

「駄目よ、チェリー。コーラも、いい加減になさい。そんな事、自慢にもならないわ。二人とも、天上界と魔界に帰っても、私とはまた会えるのよ。会う時に、私が今の私なのか、男になっているかなんて、たいした事じゃないわ。私は私なんだから。中身はおんなじなのよ。わかるわよね?二人とも」
チェリーは珍しくふて腐れたように頬をふくらませ、コーラは舌を出したかと思うとプイと横を向いた。
 
 *******

卒業式はもうすぐ。それはセカンダリースクールを共に過ごした仲間との別離の日でもあった。そして、それを皆うっすらと感じていた。
アンとエレンは常にトンニャンのそばを離れなかったし、トムとトーニも毎日コーラのもとを訪れた。そしてルーシーはいつもチェリーと一緒だった。ネッドもそんなアンを見守っていて、アリスとピエールも正体を探ろうなどとせず、三人と純粋に交友を深める為、積極的に話しかけてきた。
 
*********
 
そしてついに、卒業式の日がやって来た。
その日は皆華やかに、かつ落ち着いた感じにまとめあげ、特にエレン・ピースの美しさは群を抜いて目立っていた。
そして卒業パーティーが終わる頃、誰誘うことなく、あのトンニャンとアンが初めて出会った公園の噴水のある広場に集まってきていた。
 
そこには、アンもネッドも、トムもトーニも、アリスもピエールも、エレンもルーシーもいた。ボビーとビリーのグレープ兄弟も、エミリーやフィリップスまで・・・三人をめぐる人々がいた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※Amazon、書籍は入荷したようです。他の通販も、書店も、または電子書籍もあります※