※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「ニコラスの巻」の次。「トンニャンの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

 

 

「もう、私がする事は何もないわ」
チェリーが小さくつぶやく。
「いいえ、まだあるわ」
突然後ろで声がした。
「トンニャン・・・」
トンニャンの真っ直ぐな視線が突き刺さる。
「チェリー、あなたはたくさんの苦しんでいる人々を助けなければならないわ。あなたはケルビム(智天使)ですもの。世界はまだまだ広いのよ」
チェリーは、自分に言い聞かせるように首を揺らせる。
「あなたの言うとおりよ、トンニャン。戦いは・・・平和への戦いは、これからなのね。」
しかし、その戦いに必ず立ちはだかる者が悪魔であり、コーラがその一人である事を、チェリーは未だはっきりと認識していない。
 
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「チェリーは純粋すぎる。そして、コーラも・・・」
それがいずれ二人を自滅に追いやる事がないよう、トンニャンは祈るだけだ。
 
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「ね、私達一緒に暮らし始めて、もう一年以上になるわね」
大好きなミントティーを飲みながら、コーラは微笑む。チェリーも、レモングラスティーを口にしている。
「そうね、あっという間に月日は流れて・・・。でも、もう二度とこうして三人で暮らす事もないのね」
トンニャンもラベンダーティーのカップを引き寄せた。
「でも、また会えるわ」
チェリーもコーラもうなずいた。三人が三人とも、別れを感じていた。今度別れたら、いつ会えるのだろう。それは、誰もが予想できない事だった。
 
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トンニャンは一人、校庭の隅の芝生の上に寝転んでいた。季節は五月末。卒業式の六月は目の前だ。
「トンニャン。」
笑いかけてきたのは、アンとエレンだ。二人はトンニャンをはさんで両脇に座った。
「アリスもトンニャンにつきまとわなくなったし、良かったわ」
エレンもあいづちを打つ。
「ほんとね。一時はどうなるかと思ったけど」
トンニャンはゆっくりと目を開くと身体を起こした。するとアンとエレンは、申し合わせたように、同時にトンニャンの頬にキスをした。そして、トンニャンが口を開く前に、二人は弾かれたように立ち上がり走り去った。
トンニャンは二人の後姿を見ながら微笑んだ。
 
 *********

「トンニャン、今度会う時は今の姿?それともいつか見た・・・その、少年の・・・」
トンニャンが、チェリーの言葉をさえぎった。
「あなたに男の姿を見せたのは間違いだったかしら?チェリー、あなたは、アンやエレンとは違うのよ。自分の立場を理解しなさい。クビドという婚約者がいるケルビム(智天使)なのよ。」
チェリーは赤面してゆく自分を感じた。いつか見た少年のトンニャン。それがいかに美しい少年だったとしても、口にすべき事ではなかった。チェリーは自分の軽々しい言動を恥じた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

※チェリーとトンニャンのこんなシーン。それは何千年後の未来(20年以上も後に書いた)トンニャンシリーズへと繋がっていきます。
トンニャンシリーズ、問題のシーンはこちらから

https://note.com/mizukiasuka/n/ne59ad1154c9a?magazine_key=mf04f309d9dfc

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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