汗ばむTシャツを着込み向かい日のあたる無人駅に田舎ワンマンで到着した俺。
帰省目的で数年ぶりだが帰って来たものの、当の故郷は“相変わらず”と言ったところだろうか。進歩のない超が付くほどの過疎田舎だ。

我ながら情けない。

地本のタクシーに乗り込み、いざ実家を目指してGO!GO!ツェペリ。
変わらない町並みを窓から眺めながらiPodから流れるルーシーモノストーンを聞く。

タクシーはまだ畦道を突っ走る。

とくに故郷に馳せる思いもなく、町並みが過ぎると懐かしい光景。
タクシー料金1700円…
高いと悲観しつつもとりあえず払い。
実家に到着。
帰省といっても、明確な目的もある。
上京してバイトばかり続けて収入に困っていた俺を母さんはいつも心配してくれる。
だが晴れて今回本格的な職場が決定したので、母を安心させる為にそれを報告というのも兼ねての帰省なのだ。

いっちょ前に上京前にはついてなかったインターフォンを鳴らした。

リンリーン……

涼しすぎるまでのその音に戸惑いを抱きつつも扉は開きそこから母の顔を覗かせた。
「まあ、えっちゃんてば!
なして帰って来たん?」
「母を安心させる為」とは告げず
「いや…その…話したい事…あるし」と照れ臭そうに言う。
だが母のその笑顔にはどこか不安な気持ちが伺えた。
昔ながらの“囲炉裏のある居間”であぐらをかいて寛ぐ。
「はぁ…」とため息一つ。
内心これを告げる事に気持ちが揺らいでいるのだ。
また余計な心配をされないか…と。
奥から母はお茶を持って来てくれ、それを静かに飲み干した後告げる。

「俺、ちゃんとした仕事見つかったよ」

母の顔色を伺いながらもなんとか告げた。
母は生粋の心配性だ。
またストレスを与えてしまっただろうか。

「そう…よかったわねえっちゃん!」

以外にもその顔は明るい…
心配や不安など微塵も感じられない笑顔。
とりあえず、ホッとした。
時刻はというとまだ午前も10時を過ぎたあたりだ。
一応久々の実家。休日を有意義にエンジョイするとしよう。

てなわけでガキの自分に通った“裏山の森”へと向かった。
俺はこの森が大好きだった。
産まれた時も両親はここに連れて来たらしいし、それ以降もこの森は俺と仲間達の秘密基地だった。
なかでも一際目立つのがトトロに出てきたあの大樹なみの樹だ。
村の御隠居婆ちゃんの話だと樹齢1000年を軽く越えるとかなんとか。
ここは木登り競争とかでよく遊び場として重宝していた。
あと切り株がやたらに多くて、ここに座り弁当を食したりもした。
いつしかここは俺にとっての掛け替えのない場所だった。

…時が過ぎ、もう夜だ。森の夜はとにかく寒い。
「帰るとするか…」

膝に両手をつき、真夏とはいえ肌寒い森を実家へ向け歩きだした。

のだが………

「おい、おまえ」
背後のこの声に反応したら俺は………

どうなるのか。