半ば強引に押しかけた形になり、仙台での同棲スタート。
毎日が楽しくて、しかたなかった。
そんなある日、進学先で行われているから、と、文化祭に招待してくれ、彼女だと、クラスメイトに紹介してくれた。
私は幸せな毎日を送っていた。
ところがある日、生理が来なくなり、お腹が大きくなっている事に気づいた。
妊娠検査薬を使い、検査してみたら、
陽性だった。
慌てて産婦人科に行ったら、本来なら2回目の検診を受けてなきゃならないのに、初診だった事に医師は驚いていた。
その場で、妊婦検診を一通り済ませた後、
「ここまで大きくなったら、うちでは診れないから」
と、赤十字病院へと紹介状をかいてくれた。
そして、最後に、医師は、
「たまに居るんだよね、マイペースな妊婦さん」
と、苦笑いしてたのを覚えてる。
本来受けなければならない検診を、一気にしたので、お金がかなりかかってしまった。
赤十字病院を紹介してもらったはいいものの、仙台に来たばかりで、土地勘がなかった私は、タクシーで向かった。
そこでの検診を終え、帰ろうとした私は、財布を見て、1000円ちょっとしかない事に気付いた。
タクシーに乗って帰ったとしても、お金がないし、翼は、まだ学校から帰ってないから、相談も出来ない。
そこで私は、タクシーの運転手さんに、目的地を伝え、
「今、1000円位しか持ってなくて。
お願いします! これで、行けるところまで、行ってください!」
と頼み込んだ。
すると、運転手さんは、車を走らせ、
1000円の所でメーターを止め、なんと、自宅まで送ってくれた。
その日は、雪が降りそうなくらい寒い日で。
妊婦を寒空の下に放り出せないと思ったのかもしれない。
でも、運転手さんの優しさがとても、身に染みた。
自宅に着き、タクシーから降りた私は、何度もお礼を言った。
運転手さんは、穏やかに笑い、去っていった。
【あの時の運転手さんに、改めてお礼したいな】
と、17年経った今でも、ずっと思い続けている。