2分間の危機(2013チャレンジ富士五湖 その2) | ごまめが歯ぎしりをやめる日

ごまめが歯ぎしりをやめる日

くだらない事をうだうだと書ける今日という日に、心から感謝。

去年は雨も風もなく、わずかに富士山も拝めた山中湖。



今年は強い雨に厳しい寒さ。視界も悪く、向こう側が見えない。

この上なく冷酷な歓迎ぶりだった。



まだ20kmも走っていないのに、脚が重くなる。

筋肉の冷えは確実に進んで、走る以外の動作がだんだんと

できなくなってくる。



腕が上がらない。時計を見ることもできない。

サプリメントを摂ろうにも、手がかじかんで

パンツのファスナーが開けられない。



あきらめて、エネルギーゼリーを補給しようと

後ろポケットに手を伸ばそうとしたのだが・・・


身体を少しひねっただけなのに、わき腹に激痛が走った。

軽く肉離れを起こしたっぽい。何でこんな簡単なことまで

できなくなるのか。。。



道路情報の温度表示は「0℃」

雨に叩きつけられるだけでなく、横を通っていく車が

水たまりを踏んで、大量の水ハネをランナーに飛ばしてくる。



ダメージの蓄積が、今日はとんでもなく早い。

ネガティブなことばかりを考えながら、

それでもようやく湖の東端までたどり着く。



折り返して、再び西へ。少し空が明るくなってきた。

湖面には湯気が立っている。



ママの森を抜けて、エイドへ。

冷たい水を飲める状況ではなかった。



イスに座り、毛布に包まれて憔悴しているランナーが数人いた。

スタッフが携帯で救助を求めている。





ここに温かい飲み物はなく、トイレへ。




長い列・・・5分ほど待たされ、用を足して再び走り出す。


それからすぐのことだった。




全身に震えがきた。止まらない。


肩も、指も、歯も脚も、意思と関係なくガタガタと震え始めた。







つい、口走っていた。




「死んでたまるか・・・山梨のこんな田舎道で(失礼)・・・」








すぐさま両腕両足を思い切り動かして、ピッチを上げた。

トボトボ走っていても、体温は下がっていく一方になる。


とにかく無理してでも動いて、震えを止めなければ。

死にたくなかったから、必死に走った。。。




2分ほどで震えは止まったが、

今思えば、とても怖い時間だった。




ピンチこそ脱したといっても、

手はかじかみ、顔の筋肉も固まったまま。

脚はもう寒いを通り越して、感覚がない一歩手前まできていた。




27.6kmにある最初の関門を、約20分の貯金で通過する。


関門を過ぎたエイドのテントには、たくさんのランナーがいた。

雨宿りという感じではない。毛布に包まっている人もいる。

どうやら皆、収容のバスを待っていたようだ。



まだ動けるなら、山中湖だけで帰るわけにはいかない。


でも、完走を考えられるような状況でもない。

明らかに去年よりペースは遅く、余力も少ない。



自分にできるのは、ベストを尽くした上で

無茶をせず、生きて帰ること。


これはレースだが、趣味の範囲は決して超えない。

趣味である限り、生きている限り、チャンスは何度でもある。




100kmという距離の先にあるゴールを考えず、

自分が納得できる場所まで行くことを目指そう。





・・・修羅場と化した山中湖を抜け、

再び忍野八海を通って富士吉田へ。



向かうは40km、そして河口湖。

雨はまだ止まない。



(つづく)