夏休みの課題図書-その② | 小学校での読み聞かせ活動記録

夏休みの課題図書-その②

今日の記事も第52回青少年読書感想文全国コンクール から何冊か紹介します。

中山 千夏, 和田 誠
どんなかんじかなあ

31P/27cm/自由国民社/小学校低学年対象の読書感想文用の絵本


目の見えないまりちゃんになったつもりで、目をつぶってみた。どんなかんじかなあ。たくさんの音が見えた。


今度は耳のきこえないさのくんの真似をして、耳栓をしてみた。どんなかんじかなあ。母さんのほくろの数まで見えるようになった。


きみちゃんの両親は、神戸の大地震で死んでしまった。自分の両親がいないことを想像してみた。て゜も判らなかった。そして、どんなかんじか、きみちゃんに聞いてみた。そしたら、きみちゃんが僕に「動けないってどんなかんじ?」って聞くんだ。車椅子で過ごしている僕、色々なことを考えているみたいだ。ついでに、動けるってどんな感じか考えてみよう。


障害者の立場に立ったらどんな感じなんだろうということを絵本にまとめているようです。ごめんなさい。この絵本、嫌いです。色々な立場になることを考えている主人公の男の子が、最後に車椅子に乗っている絵で終わるのですよ。健全な子どもが障害者に対して想いを馳せるならともかく、ちょっと救いようがない感じがするところが、苦手です。


後藤 竜二, 高田 三郎
紅玉

31P/25cm/新日本出版社/小学校中学年対象の読書感想文用絵本


りんごの季節になると話す父の思い出話です。1945年秋。終戦直後のりんご畑には、たくさんの実が生った。これで家族の生活も少しは楽になると思っていたら、川向こうの炭鉱で働かされていた緒朝鮮と中国の人々の群れが押し寄せ、りんごを強奪し始めたのだ。朝鮮人も中国人も死に物狂いである。しかし、父も家族のためにりんご畑を守らなければならない。


片言の中国語で、りんごを盗らないでくれ。家族が養えなくなる。と必死の思いで訴えた。すると、その言葉を耳にしたからだの大きな男が、仲間を引き上げさせてくれた。「りんごはすべて置いていけ!」男は言った。人々は、ふところに詰め込んでいた紅玉をもそもと取り出し、父の足元に置いて、静かにりんご畑から出て行った。


りんごの山と人々の群れを父は、見つめながらいつまでも立ち尽くしていた。りんごの季節が終わり、あの人々が祖国へ帰れたかどうかも定かではない。「あの人たち、どうしてるべな。」父は、りんごの季節になると毎年、この話をする。


人はなぜ戦争をしてしまう生き物なのでしょう。こんな悲しい人しか、生まない愚かな行為を私たちは、決して許しては繰り返してはならないと思います。この絵本の父、という人は昨年の終戦記念日には89歳で、お元気だったそうです。ただ、戦争は良くない!やめるべきだ!と叫ぶよりも、繰り返し繰り返し、若い頃の過ちや取り返しのつかない時間を悔いながら、精一杯生きている人の記憶の中に、本当の戦争の悲惨さが詰まっているような気がします。


同じ人であるのに、労働力として奴隷のようにつれて来られた朝鮮人や中国人に対しする言葉に出来ない懺悔の気持ちと自分たちが生きてゆくために切り捨てなければならない厳しい現実。生きてゆく上では、正しいことと間違ったことが錯綜してしまうせつな的な瞬間もあるでしょう。それを糧として乗り越えるのか、懺悔し続けながら生きてゆくのか、押しつぶされしまうのか、人それぞれなのでしょうね。考えさせられることの多い絵本です。さらりと読み流す小学生よりも、きちんと歴史を学んだ感性豊かな中学生や高校生に読んでもらいたい一冊のような気がします。


高楼 方子, 出久根 育
わたしたちの帽子
216P/21×16/フレーベル館/2005/-小学校中学年を対象とした物語

小学校5年生になる直前の春休みの間、サキは不思議な体験をした。仮の住まいとして両親が選んだ古いビル。仮住まいの部屋のタンスの中にひっそりとかけてあった帽子とその帽子を作った育ちゃんという女の子と不思議な体験を重ねながら、友情を育む物語。


この作品を読みこなせる最近の小学校中学年って、どれくらいいるんだろう。時間を扱う作品として真っ先に思いついたのが、ミヒャエル・エンデの『モモ』であるが、正直、『モモ』のほうが単純明快である。読書が大好きなごく一部の小学生が読む作品であり、この作品がよみこなせる小学生なら、模範的な読書感想文も書けるだろうと想像してしまった。


主人公もその友達も小学校5年生程度の女の子なので、読書好きの中高生なら、楽しんで読める気がする。古いビルやおばあちゃんたちの子ども時代と錯綜するストーリー展開は、不思議でノスタルジックではあるが、中途半端に現実的でいま一つという印象であった。『まあちゃんのながいかみ』のたかどのほうこが作者で、挿絵が出久根育という組み合わせなら、この作品よりも優れた絵本を生み出すことができるかも知れないな。といけない想像をしてしまった。


梨屋 アリエ
空色の地図

237P/20cm/金の星社/2005/中学生の読書感想文を対象とした作品


中学3年生の初音に、ある日突然、8歳のときの私から手紙が来た。この手紙をきっかけに、その手紙を書いた頃に過ごした千塚という場所と美凪という同じ年の少女を思い出し、マンネリになった日常を打破すべく、行動を起こした。


高校受験が間近に迫りつつあるのが14歳。なんとなく、未来が見えているようで見えないのが14歳。大人になったつもりでも、どこかに子どもの心をまだ持ち続けているのが14歳。そんな不安定な時期の少女が、自分らしさを探すために、一歩を踏み出すという、そんな作品です。


少し前に読んだ『少年は戦場に行った』という作品も、15歳の少年が主人公でした。戦地に赴いた少年も、豊かな日本で思春期のけだるさを味わうのも同じ人間かと思うと、人生の不思議さや運命の残酷さを実感しないではいられません。読書感想文を書く・書かないに関係なく、感性の鋭い思春期の少年少女にたくさん読んでもらいたいと思いました。そして、生き抜くことの厳しさについて、とことんまで考えて欲しいと思いました。