お家を建築中の某県にてGWを過ごしています。しばらく忙しかったので、久々にゆっくり読書ができて嬉しい( ´ ▽ ` )もう複数回は来訪している馴染みのロッジで、ハンモックに揺られながらページをめくる贅沢!新緑の香りに囲まれながら、コーヒーを片手にご主人が焼いたビスコッティを食べていると時間の流れがいつもの半分くらいに感じます。


さて、本題。ニコロ・マキアヴェリの名著、読みました。私がよく読む経営者向けの書籍や組織論の書籍で頻繁に引用されていたので、これは実際に読まんといかんなと思って購入しました。確かに非常にシンプルながら、16世紀に書かれたとは思えないほど学ぶことの多い1冊です。


(画像お借りしました)


本著はフィレンツェの名家、メディチ家に献呈されたようですが、訳者の解説によると当時の当主に読まれたかどうかは判然としないそうです。


マキアヴェリの生家はフィレンツェのヴェッキオ橋の袂、ピッティ宮のごく近所にあるそうで、そういえば以前母とイタリア旅行に行った時に通ったかもしれないとふと思い出しました。マキアヴェリは1497年から1513年までフィレンツェ政庁の書記官として外交・内政・軍事に深く関わった経験を持ちます。1513年の早春に政争に巻き込まれて失脚したのち、官僚として政界に復帰することを目指して同年の夏から冬にかけて怒涛の勢いで「君主論」を執筆、当時フィレンツェの最高指揮官だったロレンツォ・デ・メディチに献呈したとされています。


「君主論」およびマキアヴェリズムは、「為政者が非道な振る舞いをしても結果が良ければ許される」という所説を語った一部分だけが注目され、その学術的な部分より道徳的な観念から非難を浴びてしまった書籍で、一時期は「禁書目録」に載っていたこともあるようです。


本書ではまず君主制の分類(世襲制国家、新君主が収める国家、教会君主国家など)や成り立ち、国の維持の方法論について触れたのち、君主として最も気を配るべき軍事面、そして君主が持つべき資質について論じ、最後にイタリアの緊迫した情勢について言及しています。


本書が出版されてから現代に至るまで、さまざまな研究者や為政者がマキアヴェリズムについて論争を重ねており、まとめはおろかこの本の解説本が山ほど出版されているので、細かい内容についてはそちらに譲りますが、「君主」を「CEO」に置き換えると現代のビジネス書としても十分通じるよな、と思う名言に溢れています。


15-16世紀にかけて活躍したヨーロッパ各国の君主の他、トルコやローマ帝国時代の君主なども例に使い、一国の君主として何を重要視すべきか、どのように振る舞うべきかについていきいきと描写されており、ハウツー本として大変優れているなと思いました。成功例と失敗例を冷静に分析して、この君主はこうしたのでよかった(よくなかった)という主張と根拠がはっきりしているので読みやすかった。


あとは、自身で国内外の政治、軍事に関わってきた経験があるだけ冷酷なまでに現実主義で、一国を維持するのだから常に全てに寛容ではいられず、戦争は避けられないのだからこちらから積極的に争いを起こすことも必要であるとか、一部の民衆を痛めつけるだけで済むならそうすべきだとか、結構血生臭いことも書いてあります。私は政治を考える時は性善説より性悪説に基づいた方がうまく行くんじゃないかと思うたちなので、納得感を持って読み進められました。もちろんだからと言って暴力に全面的に賛成というわけではないですが、時には国民の一部が不利になるような難しい決断をしないといけないのが為政者だよね、というマキアヴェリの歯に衣着せない物言いは好感が持てます。


ちょっと長くなりましたが、解説部分も含め非常に勉強になる1冊でした。




そんな感じ。