今回の旅のメイン、京都迎賓館。

京都迎賓館は、国賓のおもてなしのために平成17年 京都御苑に開館しました。

以前、仕事の関係で、岐阜県の美濃和紙を取材したこ とがありました。
ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されている美
濃和紙。
その中でも、最高ランクの「本美濃紙」。
原料に楮(こうぞ)のみを使い、徹底的に手作業でアク と塵を取り除くことで、ほかの産地の和紙と比べて「白さ」が特徴。
熟練の職人さんが漉くことで、繊維が縦と横にしっかり絡むので、薄くて丈夫。
そんな特徴をもつ本美濃紙は、 障子にピッタリ。
取材して思わず欲しくなり、買い求めましたが、たった 1mくらいで、2500円を越すお値段。高級品です。

京都迎賓館の調度品に使われている和紙は、すべて 本美濃紙だと聞いて、一度見てみたいなぁ...と憧れて いたのです。

でも、国賓でも大臣でもない私には、 そんなチャンスはなかなかないよなぁ...と思っていました。
がっ!
平成28年から、通年で公開しているというじゃあ〜りませんか!
コロナ禍の今は、5月末の緊急事態宣言解除に伴っ て、一般公開が再開されている!
ネットでガイドツアーを予約して、 
やってまいりました! 念願の京都迎賓館
正面玄関の扉は、樹齢700年のけやきの一枚板を使 ってあるんですって。

正面玄関にふさわしい銘木を探していたところ、福井 県で伐採後30年程度じっくり乾燥された逸材がたま たま見つかったんだそうです。

オープンザドア!

さっそく本美濃紙の障子と行灯です

京都迎賓館内は、カーテンを一切使用せず、窓などの 内側はすべて障子です。

館内にある430枚ある障子はすべて、本美濃紙保存会 による 手漉き和紙。

きらびやかさはないけれど、実はものすごく贅沢。

本美濃紙の白さと薄さは、光を遮りながらも、柔らかく 光を通してくれるので、優しい明るさになります。 ちなみに、洋紙は、日光に当たり続けると黄ばんでき ますよね。

それに対して、本美濃紙は、紫外線に当たると、かえっ て白くなっていくんですって。高価だけど、長く使えるス グレモノなんですよ。

【桐の間】

和食を提供する「和の晩餐室」。

漆の一枚仕上げの座卓は、長さ12m。 
曇りなく磨かれて、鏡のようです。

座椅子も、ピカピカの漆塗り


写真を撮る私の姿がばっちり写ってるw

蒔絵の「五七の桐」が施されてますが、椅子ごとに葉 の色味が異なっていて、同じものは1つもありません。
柱の釘隠しも、五七の桐。
(五七の桐は、明治時代から日本国政府の紋章として 使用されています。京都迎賓館の紋章でもあります。)

【聚楽の間】

ロビーのような場所です。

何気なく置かれた花籃は、 
人間国宝 早川尚古齋作の竹工芸。

館内で唯一、自然光が入らない部屋なので、
安楽椅子の座面には、鮮やかな赤色の西陣織が使われています。
ちなみに、この安楽椅子には、鉄や釘は一切使われていません。


この部屋の釘隠しは、千代結び 平和への願いが込められています。 釘隠しの形は、部屋ごとに違うんですよ。

【庭園】

京都御苑の緑の木々を借景として、まわりの建物に融 け合うように配置された池。

古くから日本人の住まいに貫かれた伝統「庭屋一如」 の思想です。

東西の建物をつなぐ廊橋を渡りながら、素晴らしい庭 の眺めを楽しめます。

吉野杉の船底天井も、池との一体感と奥行きを感じさ せてくれます。

廊橋天井に施された透かし彫り。
 蟋蟀(こおろぎ)と蜻蛉(とんぼ)。 
職人の遊び心に思わず笑顔(*´`*)


錦鯉たちは、2004年新潟県中越地震で大きな被害を 受けた旧山古志村産。

その後、この池で生まれた稚魚もいます。

「ヒレナガニシキゴイ」 という尾びれの長い鯉が、上 の写真に1尾、下の写真にも1尾いるのが分かるで しょうか?

インドネシアのヒレナガゴイと日本の錦鯉との交配種 なんですって。

 和舟に乗って、舟遊びができるようになってるんですね!

外国からの賓客に、日本文化を楽しんでもらえます。 雅じゃのう~


【夕映の間】

大臣会合などの会議や立礼式のお茶のおもてなし等 に使われる部屋です。

東側の壁面には 「比叡月映」 京都の東にそびえる比叡山を月が照らす様が描かれ ています。

西側の壁面は「愛宕夕照」
京都の西に連なる愛宕山に夕日が沈んでいく様です。
2つの絵はどちらも、日本画家の箱崎睦昌の下絵をも とに、綴織りの技法で製作された織物。
 さらっと書きましたが、織物なんですよ!

この絵の具で描いたような織物には、いったい何色の 糸が使われているんでしょう?

回廊から眺める庭園。 どこから見ても、額縁に入った絵画のように美しいで す。

【藤の間】

迎賓館の中で最も大きな部屋。 洋食の晩餐会や歓迎式典の会場に使われます。
天井の照明は、本美濃紙と京指物の技能でつくられた 格子光天井。
連凧のような3段の笠は、高さの調節ができるように なっているそうです。


壁面装飾は、日本画家の鹿見喜陌の下絵をもとにし た綴織りの織物。



広い空間を柱もなく支えるために、上から吊ってある んだそうです。

洋食の晩餐会では、こんなふうに食器や椅子が並べら れるんですね。
 華やかさの中にも落ち着いた色味がステキな食器。 さり気なく五七の桐が。

藤の花言葉は「歓迎」。
椅子にも床の緞通にも、藤の紋様。
藤を思わせる落ち着いた品のある色も、ステキ


私の愛する美濃和紙が、日本文化の代表として惜し げもなく使われていて、なんだか誇らしかったです。

日本の自然から生まれた素晴らしい材と、伝統工芸の 職人たちの技と文化が結集した京都迎賓館。

ドヤ顔せず、自然と調和する日本の素晴らしい文化 は、日本人こそ知るべきです。

機会があれば、ぜひ!! オススメですよ~