今日は少し長くなりますが、
ペダルについて、私が心がけていることを書いてみます。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。


右ペダル(ダンパーペダル)は、ダンパーを弦から離し、すべての弦を共鳴させる装置です。
だからこそ、音に厚みや広がりを与えることができます。


でも同時に、とても繊細です。


前の和音の響きが残ったまま次の和音を重ねると、
それは「豊かさ」になることもあれば、「濁り」になることもあります。


ペダルを一度しっかり上まで戻し、
効果を消してから踏み直す。
この基本を丁寧にするだけで、響きは驚くほど透明になります。


自分では聴いている「つもり」でも、
濁った響きに耳が慣れてしまっていることもあります。
同じ部分の踏み替えを意識して弾くだけでも、
音楽の印象は大きく変わります。


意外と、ペダルの濁りに気付かないまま弾いてしまうこともあります。
全体ではなくても、ほんの一部分だけ濁っている、ということも。
(私も気を付けないと、そうなることがあります…!)


素敵な音楽を奏でるために、まず大切にしたいのは「響きをよく聴くこと」。
ぜひ、ペダルが一部でも濁っていないか、耳を澄ませながら演奏してみてください。


半ペダル、そして「その間」の世界

ペダルは「踏む」か「離す」かの二択ではありません。


半分ほど踏むことで、
・低音だけをほんのり長く残す
・響きを保ちながら音粒をはっきりさせる
・にじませながらも輪郭を失わない

といった繊細な効果が生まれます。


さらに、4分の1ほどの浅い踏み込みでも響きは変わります。


・倍音がわずかに増え、音色が少し丸くなる
・響きは柔らかくなるが、和声は濁りにくい


大きく響かせるためではなく、
音色をほんの少し整えるためのペダルです。


ぜひ、同じ和音を
・ペダルなし
・4分の1
・半分
・全部

で弾き比べてみてください。


足の深さで、音の世界が変わるのが分かるはずです。


ペダルは最初から音楽の一部

私は、ペダルは基本的に音楽の一部だと考えています。
多くの作品は、ペダルを使うことを前提に書かれていると感じています。


私の師匠は、
「最初からペダルを使いなさい。
そして、必要のないところを抜いていきなさい。」
と教えてくださいました。


ペダルを後から足すのではなく、
最初から音楽の一部として扱う。


そのうえで、
・ここは濁るから離す
・ここは和声が変わるから踏み替える
・ここはあえて乾いた響きにする

と、引き算していくのです。


大切なのは、
踏んでいるかどうかではなく、
その瞬間の音楽に何が必要か。


ペダルを「抜く」という選択

ペダルは基本的に使うもの。
でも、抜くという選択もあります。


たとえば、
・明らかに響きが濁るとき
・スタッカートの性格を大切にしたいとき
・左手が休符で、伴奏の響きをクリアに保ちたいとき
・和声が大きく変わる瞬間
・対位法的に声部を分離させたいとき
・速いパッセージで音数が多く、響きが溜まりすぎてしまうとき
・あえて乾いた音色を作りたいとき


踏むか、踏まないか。
それはテクニックの問題ではなく、
音楽の選択です。


さまざまな考え方について

ペダルを使わずに練習する、という考え方もあります。
指だけで音楽を成立させるための、
とても大切な方法です。


一方で、私は、作品はペダルを前提に書かれていると考え、
最初から音楽の一部として扱っています。


どちらが正しいというよりも、
大切なのは「何を聴き、何を目指しているか」。
音楽には、さまざまなアプローチがあります。


左の弱音ペダルについて

左の弱音ペダルも、表現に大きく関わります。


グランドピアノでは音色が柔らかく変わり、
アップライトでは中央ペダルが弱音装置になっていることもあります。


このペダルも一段階ではありません。
少し踏むだけでも音の輪郭はやわらぎ、
しっかり踏めば、より繊細で内面的な響きになります。


強弱を変えるだけでなく、
音の「質感」そのものを変えることができるのです。


弱音ペダルについては、以前の記事でも詳しく書いています。
ぜひそちらも参考になさってください。


(弱音ペダルについての過去の記事はこちら)


ペダルの扱い方ひとつで、
演奏は濁ったものにも、洗練されたものにもなります。


今日はぜひ、
「今の響きは本当に美しい?」
「この深さは適切?」
と問いかけながら弾いてみてください。


足の感覚が変わると、
あなたの音楽は確実に変わります。


あなたのピアノライフが、
より深く、より豊かなものになりますように。