孫息子のRの成長に違和感を持ち始めたのはたしか彼が生後16ヶ月頃だった。

発語に関しては私の息子も2歳近くまで無かったし、特に気にしてはいなかったけれど、とにかく自分の名前に全く反応を示さないことと、人見知りをしないというか相手が誰でもまるでお構い無しの感じがどうしてもしっくりこなかった。

遠い昔、大学の基礎科目の一つとしてとったクラスにChild Development(児童教育)があり、課題の一つとして「A Child Called Noah」という自閉症の子供の成長を綴った本を読む必要があった。

かれこれ40年近く前の話で、その頃はまだアメリカでも自閉症に関する研究やサポートの実態は整っていなかったと思うし、今振り返ると当時この本に強い興味を抱いたのは内容そのものよりも筆者の妻、つまり自閉症を持って生まれた子供の母親が日本人であることにふと親近感を覚えたのかもしれない。

余談として、この日本人の母親が米谷ふみ子さんという作家であり「過越しの祭り」という作品で1986年に芥川賞を受賞されているということを後々知った。

そんな過去もあってか、私は孫息子のRが生まれるずっと前から自閉症というものに対する基本的な知識はあったと思うけれど、だからといってRの母親である私の娘が何も言わないうちから私の心の中の不安を彼女に告げることはしたくなかった。