おもった | 一足の靴

おもった


他人のスリッパをはきたいと思った
他人のコップで飲みたいと思った
他人の毛布で眠りたいと思った
他人の肌の匂いになりたいと思った
あらゆる他人のダイニングキッチンで
人魂のように漂っていたいと思った
と今思っている


谷川俊太郎