二十三
俺が帰ってくるなりおじいちゃんが風呂場からマッパで出てきて、おまけに左手を腰に回しながら牛乳を飲み始めたので辟易の度を超えてあきれ返ってしまった。おじいちゃんは何だ、おい、いたのかよという顔をしながらゆっくりとバスタオルを腰に巻いた。既に手遅れである。
「帰ってくるなら前もって言ってくれ。これでもこっちは気を使ってるんだから」
2人がこちらへやってきてから既に3週間以上経過しているのに今さら気を使うも何もないもんだ。気を使っているという常識的な感覚があるなら3週間どころか3日でここを出て行くはずだ。それをズルズルグダグダと何をしにきたのかすら教えてくれようとはせずに、やれパチンコで矢吹丈だとか、やれドミノ倒しで努力してるだとか、やれルービックキューブは素性の分からないヤツがやるもんだとか、この3週間は無駄のオンパレードだった。
そろそろ帰って欲しいと言おうかどうか迷っていると、今度はおばあちゃんがバスタオル1枚で風呂場から出てきた。オマケにバスタオルがはだけてセクシーショットまでご丁寧に見せてくれやがった。俺はおばあちゃんのマッパを目の当たりにして吐き気をもよおしてしまったので、おばあちゃんに背中を向けて深呼吸した。するとおばあちゃんの使ったボディーソープの匂いが俺の鼻の穴に充満した。俺はますます吐き気をもよおした。
「ちょっとゴメンね。髪乾かすから」
おばあちゃんがそういうと長く黒い髪をだらりと垂らしながらドライヤーのある場所まで手探りしていた。その姿はまさしくOoohHeavenの貞子そのものである。指のつめがはがれていないかチェックするとつめははがれていなかった。肌の色はどうかと見てみると健康的なツヤを帯びた肌の色だった。最後に目は白目をむいていないかチェックすると目は白目をむいていた。俺はおばあちゃんを「貞子初段」に認定した。
「おい、玉子。お前アレみたいだぞ、アレ」
おじいちゃんが貞子の名前が分からずにアレ、アレと連呼しているとおばあちゃんはドライヤーを使い始めたのでおじいちゃんの声が一切聞こえなくなった。おじいちゃんはこういう時に自分の話を聞いてくれていないと思い込むのでスネるのである。案の定、おばあちゃんが髪を乾かした後、「何か言った?」と聞いてもおじいちゃんは、「もういいや」と言ってまたドミノ倒しをし始めた。俺はおじいちゃんを「やさぐれドミノ三段」に認定した。
