ゴォ……

アレスとフラルの前で、風が唸る。けれど、その風は自然界で発生する風ではない。
『魔法風』と呼ばれる魔法の発動準備時に発生する、一種の魔力。
風が強ければ強いほど、発動する魔法が高度であることを示す。
両者から発生する魔法風は、共鳴するかの如く強くなり、ピタ……と止まった瞬間、

「アクリアル!」
「フレアサージュ!」

両者の魔法―――フラルは水、アレスは炎の魔法―――が発動、ぶつかりあって爆発する。

……が、次の瞬間には一体どうのようにしたのか、
両者は急接近し、それぞれの得物を振るって互いの剣戟を受け止める。

そして始まる攻防。甲高い金属音が何十回も鳴り響く。



ただしその攻防にかかる時間は、



剣同士の打ちあい100回につき、約0.69秒。




『ヒト』という存在の範疇を超えた速度。
この世界の神に呪われた者しか、至れない速さ。


『ヒト』がこの戦いを見たとき、言うだろう。

「まさしく、『神』速だ」と……。




少女たちの攻防は続く。3本の剣が、数え切れないほど鳴り響く音と共に。

一見すると、アレスの2本の大剣による斬撃を、全て防ぎきっているフラルが優勢に見える。
だが、実際に勝っているのはアレス。
フラルの得物は1本の両手剣のみの為、
アレスの斬撃を防御することから、攻撃することに転じることが出来ない。


剣同士が打ちあう音の中に、鈍い、人肉を切り裂くような音が混じり始める。
同時に、フラルの足元が1滴、2滴、3滴と赤い滴が彩ってゆく。


それでも、『神』速の攻防は オ ワ ラ ナ イ 。





―――――――――――――――――――――――――――――



徐々に、防ぎきれなかった大剣に斬られていく目の前の標的を見ながら、
これならすぐ終わる、と思った。

相手は今のところ頬に2つ、左腕に9つ、右腕に3つ、わき腹に多数、右足に1つ、いや2つになった。
……とにかく、そのぐらいの傷を負っている。

1つの傷は1の行動を遅らせ、新たな傷を呼ぶ。
相手が倒れるのは、時間の問題。



キィン!!



『神』速の攻防の中、今までより甲高い音が鳴り響く。
それは、ワタシがフラルの両手剣を吹き飛ばした音。
目を大きく見開き、硬直したフラルの胴体に大剣を突き刺そうと


「ミラキリバリアスカッ!」


したら、知らない単語と共に空へ投げ出される。
ついでに服の一部が裂け、一拍置いてからその下の皮膚もパックリと、
鋭利な刃で斬られたかのように裂けた。

知らない単語、空への打ち上げ、見えない刃。

……多分、これが資料に載っていたオリジナル魔法。
効果は風の刃を創りだし、対象に放つ。風の刃に当たった者は空中へ打ち上げられる。
……と、言ったところか。

どうにか体制を整えて着地。
そのおかげで、フラルに引けを取らないくらい、ワタシのワンピースと足元が紅く彩られる。


「……やってくれる」

口に溜まった血と言葉を同時に吐き出しながら、言う。
一方のフラルは、魔力で自らの両手剣を手元に引きよせていた。


「……ほめられたって、嬉しくない」
「ほめてなんていないよ?」
「……だよね」


彼女は笑う。

また、疲れ切った表情で。



けれど、その口元からはあまりにも膨大な言葉……、いや詠唱が紡がれ始める。


詠唱が紡がれると同時に巻き起こる魔法風。
まるで全てを吹き飛ばさんとするかのように、豪風が吹き荒れる。
……多分、この一撃で終わらせるためだろう。

そっちが魔法なら、こっちも魔法で対抗しようか。

フラルが詠唱を終えるのを待つ。
……ワタシ?
別に詠唱なんて無くても撃てるよ。


ピタッ、とまた風が鳴り止む。


「―――負われ、終われ、すべてを滅ぼせ!
終焉の光、セイントバーストォォォォォォォォォォォォォ!!」

フラルの足元に紅い大きな魔法陣が現れたと思ったら、
彼女の前の空間から、あまりにも強力すぎる光の束がこちらへ向けて一直線に放たれる。


『セイントバースト』
それは、光属性の最高位魔法。効果は光属性の純粋な魔力を束にして放ち、
使用者の意思によって威力が格段に上がるという最高位という名にふさわしい、やっかいな魔法だ。

……けれど、それはあくまで、どんなに威力が強くとも『魔法』に過ぎない。


「『リフレク・バーストバージョン』!!」

ガラスが割れるような音を立てて、水が壁に当たって飛び散るように
目の前で、光の束が四方八方に砕け散っていく。


『リフレク・バーストバージョン』
目の前に魔力の壁を創り出し、『魔法』であれば『強度が勝っているかぎり』、
当たった魔法を消していく防御の魔法。


それは、最高位『魔法』も例外ではない。


『リフレク・バーストバージョン』を打ち砕こうと魔法を発動し続けるフラルに、
自分の魔法はそのままに、移動魔法でワタシはフラルの懐まで移動する。


そして、手にした2本の大剣『喪失のレチュード』で、


ザシュ………!!






ワタシはフラルを切り裂いた。









そのとき、ワタシが目にしたのは、



返り血と、




安心したような、フラルの疲れ切った笑みだった。








―――進行(シナリオ)設定、異常ナシ―――






・あとがき

うん、短くなった。
それとなんだこのチート具合。厨二病全開じゃねーか(ぇ