夢を見た犬 チワワの場合
 
夕方。
 
日が落ち始めた頃。
 
静かだった牢から聞こえる犬の声。
 
僕は疲れて眠っていたが
さすがに起きてしまった。
 
「俺だ。俺だ。ここから出してくれ」
 
「私なら何だって我慢するわ」
 
吠える彼らの言葉を聞いてて
ふと、先ほどの言葉が浮かんだ
 
「元々保健所」にいたが…
 
彼らは訴えているのだ。
 
まだ死にたくない。と
 
僕はまだ「人間」という性格を知らない
 
ただ、こうして優しい人が引き取っても
 
「僕の様に戻って来ないでね」
 
隣から聞こえた、みょうに寂しい声
 
本当に僕もそう思う。
 
自由のない、この場所に戻ってはいけないと
 
吠え続けていた彼らがドアが閉まる音を
聞いたとたん、静かになった。
 
どうやら人間が去って行ったらしい。
 
「また小型かよ」
 
「病気もちの私じゃ、やっぱり…」
 
出頭したのは小型のチワワ
 
1人暮らしの叔母が亡くなった時
 
息子も娘もいない叔母が可愛がっていた
 
真っ白なチワワ。
 
飼い主が飼えなくなった犬は
 
保健所に来る事が多いらしい
 
「あいつはまだ幼いからね」
 
「ここで人生を終わらすのはもったいないよ」
 
引き取ってくれる人間も
 
少なからず居てくれるけれど
 
それは自由を駆け巡っていた僕にとって
 
「人間」という自我自欲の奴隷になっただけだって
 
人間は好きな人の前で絶えたい
 
人間を知った彼らもそう思っている
 
家族と思うのなら君の前で絶えたいと
 
僕はここで知る彼らの話を聞いて
 
そう思いたくなった。
 
愛を受けた彼らがここにいる理由を
 
つづく
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