月羅をなんとか説得して、姉のもとに帰らしたが、

それは条件付きだった。
その条件を哉夜の目の前でやったせいか、

哉夜はさっきからだまったままだ。


「哉夜、聞いてる?」


「・・・ふーんだ!」


また、哉夜は俺の数歩先を歩く。
分かってるよ、哉夜が俺から離れようとしてる理由なんて、さ。


「哉夜、あれは不可抗力だぞ?帰す為にな?」


そうだ、あれは帰すためにしかたがない行為だったんだ。


「だから、口きいてくれよ、哉夜。」


なんか、俺が哉夜をせっとくさせてるみたいじゃん。
せっかく哉夜から離れられるチャンスだと言うのに、

俺から離れて欲しくない、そんな感情がこみ上げる。


「哉夜・・・・。」


俺・・・どうしちまったんだろ・・?
離れて欲しくないそんな辛い気持ちからなのだろうか

俺の足は進もうとしなかった。
哉夜の後ろ姿しかみることができなかった。
哉夜が先に自宅への道を歩いていくのに

俺の足はその場で止まっていた。
動かない足、薄暗い電灯に群がる虫。
空を見上げると雲に影になりながらも黄色く光る美しい月。
言葉を失うような感覚になった。
だけど、その感覚もすぐに現実に呼び出される。


「なあってばあ・・・。」


哉夜の声が聞こえる・・・・。空耳だ、空耳に決まってる。
こんな時にまで聞こえるなんて、

そんなに哉夜のことばっかり思ってるのかな・・。


「やーくん。」


何度も何度も、俺の名前を呼ぶ哉夜。
そのたびに胸の奥がチクリと動く。
哉夜のさっきの行動、無視・・・すべてがチクリと胸に刺さる。
ふたたび俺は足元を見ながら考える・・。
俺・・・


「哉夜の事・・・好きかも。」


と、ボソリと声に出してしまったのが、後悔だった。


「ホント!?」


嬉しそうな哉夜の声が聞こえた。
すぐに俺は哉夜の方に顔をあげる。


「え?」


俺は理解が出来なかった。


「俺のこと好き・・・って。」


・・・・・
え?好き?


「なわけないだろーはーーっ、はははっ!」


俺は途中から何を言ってるかわけが分からないまま

哉夜より先に歩いていた。
タダ、ボソリと言ってしまった、あの言葉を哉夜が聞いてた事。
ただ・・・・ただ、それだけだ。
好きなんて、軽々しく言うんじゃなかった。
さっき月羅がしたことなんて哉夜は忘れてるのか?
それとも、俺が・・・
俺はくびを振った。


「どうしたの、やーくん?」


「べつに・・。」


ただ、好きっていったって・・・その・・・


「友達として好きってことだから、な!?」


・・・いきなり話題ふってどうする。


「うん!」


真顔でそんな眩しい笑顔で言われたら・・・・
・・・俺、本当は分かっていたのかも知れない。


「ほら、ついたぞ。もう、夜遅いし、俺、もう寝るからね。」


「うん!」


また、あの笑顔。男と思えないような可愛い笑顔で俺に微笑む。
俺と哉夜は別れ、自室に戻る。
こわもてのお兄さん方が俺を見つめていた。


「ぶ、無事だから・・何もないって。」


いや、事故とか体に傷はなくても、

哉夜の心の気持ち的には傷はあったかもしれない。
それは俺も一緒だったってこと。

・・・・・・・・・俺は友達としてではなく

哉夜が好きなんだってこと。

入院してる彼女とは別の感情。
相手が女だから?男だから?

そういう感情ではなく、別の感情。
この感情もあの言葉も哉夜に言ったら、

今にも襲い掛かりそうな感じするな・・。
今日は眠れないな・・・。

哉夜を思うだけで、胸がくるしくなる。
哉夜のそばにもっといたい。もっと哉夜の笑顔が見たい。
そんなの彼女といた時はなかったのに、

俺・・・どうしたんだろ?
・・・・
これが・・・本当の恋?
・・・・
哉夜に・・・か。
俺は気持ちをごまかさなかった。
月羅と条件でした、あの月羅と交わした唇の感触。
彼女とした唇の感触より、もっともっと・・・・
昔、哉夜としたキスよりも何かが違った気分になった。
そう思いながら俺は唇を触る。


「アイツ・・・のぷるぷるだった、よな。今もなのかな?」


急に哉夜とキスしたい衝撃にいたった。
あんなにこばんでいたのに、自分から望もうとしている。
好きになった感情はまっすぐにしか走れない。
急にブレーキをかけてしまったら、他の道へ行ってしまう。
そう、哉夜の道へ進んだら、もう2度と戻れない・・・道。
好きだった彼女とも別れてしまう。
そんなの分かってるけれど・・・・


「俺の気持ちは・・・」


俺はそんな気分で眠りについた。