私の一番昔の記憶


夕日に当たったカーテンが風に吹かれて揺れていた。
そのカーテンの裾をぼんやりと眺めていた。
あれは何歳の時だったのだろう。

記憶とは、川上から川下に流れる岩のようにだんだんと角がなくなり、
小さくやさしいものになっていく。

そして澄んだ川の底に静かに沈む。

つらかったことが忘れられ、
うれしかったり、美しかったりした事柄は、

より一層、優美なものに変わっていく。

同じ事を経験しても、
その記憶は人それぞれ変わっていく。

何の変哲もない事が、
その人にとっては絶対忘れられなかったりする。

なんて曖昧で主観的な世界だろう。
 

母親が買ってくれたパンダのぬいぐるみの大きさ。
父親と一緒に勉強した化学式。
夏服のセーラー服の暑さと、ファンタの瓶。
銀行の伝票の山。
ワンピースの裾と赤い日傘。
息子と一緒に遊んだ公園、自転車の3人乗り。



何を失くしても記憶だけはなくしたくない。

たぶん、
そうなれば記憶を失くした悲しみさえ感じられないだろう。

それは、死ぬより恐ろしい。