著者: 辻 仁成
タイトル: 代筆屋
この話は、どうやら実話らしい。
辻氏が若かった頃、生活のためにしていた『代筆屋』。
手紙を仕上げる工程は、考えるほど意味の深い作業。
便箋・封筒を選ぶ。筆記具を選ぶ。言葉を選ぶ。字体を選ぶ。切手を選ぶ。
いつだって届けたい人を想う。
いかにその人になりきり、相手を想うことができるか。
ほほえましい青春のひとこま。
思わず頁を閉じてしまった悲しい思い出。
とりかえしのつかない過去。
どうにもならない未来。
そのとき辻氏が請負った依頼。その職人技は見事だった。
手紙を書きたくなる、と同時に手紙の怖さにたじろぐ一冊だった。