経済成長が限界を迎え、追い打ちをかけるように地球温暖化問題が大きくクローズアップされている。最近の異常気象は、日本だけでなく欧米をはじめ世界中で気候変動が起きていることが問題視されている現実を示している。経済的利益を追求し続けることよりも、生活環境を守る、そしてより多くの人々が豊かさを享受できる方向に、世界はかじを切ろうとしている。

 

 そしてグローバル経済の到着点と目されているのが、AI革命である。情報を一か所に集め、そのデーターを迅速に処理できるAIが誕生しようとしている。巨大なデーターベースが生まれ、その技術の果実はごく少数のエリートたちの思うがままに動かされることになる。「ホモ・デウス」の著者イスラエル・ヘブライ大学の歴史学者ユヴァル・ノア・ハリル氏は、警鐘を鳴らしている。人間では不可能な量の情報を収集し、分析できるAIの誕生は、それを意のままにできる人々の手によって、独裁的な政府が生まれる可能性を秘めているという。

 

 最大多数の最大幸福をかかげて研究されてきた、人類の進化はここにきて大きな分岐点に立たされている。持続可能な循環型社会を築き、AIの協力を得ながら安心・安全で快適な日々を過ごせる社会を確立するのか、ごく一部のエリートたちに監視されながら、自由のない、極貧の生活を送るのか、そこまで極端でなくともおよそ快適ではない生活環境に置かれるのか、気候変動や機械による自動化、AIによって生じる多くの困難に立ち向かって課題を解決していけるかどうかにかかっているのである。

 

 身近な問題から考えていくならば、AIの進展、ロボット導入にともなう雇用の大量喪失をどのように埋めていくかであり、将来的に収縮していくことが予測される消費需要を可能な限り減らさない工夫や制度確立が不可欠ではなかろうか。利益追求はほとんど不可能になるだろうが、日本史における江戸時代の循環型経済と同様の社会を作り上げることはできる。消費者を生み出す力があるのはベーシック・インカム(最低生活保障)であり、それをてこにしてお金を循環させ、人間を食べるために働くことから解放することを可能にする生活環境の整備であろうと考える。