前回、コーチングスタイルについてお話ししました。本題(論文)から外れますが、コーチングスタイル(指導者のタイプ)について、今日はお話をします。

指導者のタイプの分類方法はいくつかありますが、典型的なものを紹介します。

「専制型」「放任型」「親和型」「民主型」の4分類です。

まず、専制型。専制政治という言葉を歴史で習いませんでしたか? 支配者が独断で思いのままに物事を決める政治のことです。専制型の指導者もこれと同じ。選手や周りの人の意見を聞かず、自分の思い通りに事を進めるタイプの指導者です。選手はストレスが溜まり、不満感を抱くことが多くなります。しかし、長所もあります。短期間で成果が出やすいのです。限られた期限内に成果を出す必要がある場合、このような指導者も適しています。しかしながら、このような指導者の組織は長続きしない傾向があります。組織内が疲弊し、脱落する人が出てくるのです。

放任型は、選手に好きなようにやらせ、あまり積極的に指導・介入しない指導者になります。選手にとってみれば、指導者からは干渉されず、自分たちの好きなことだけやって、嫌いなことをやらなくてもよいので、楽しく活動ができることになります。しかし、組織に秩序やルールが欠如しがちで、成果もあまり上がりません。あれこれ指図されることを嫌がるチームには、このような指導者が向いているかもしれません。また、やる気のある人たちが集まったチーム、才能あふれるチームも、放任型が上手く機能することがあります。指導者の型にはめられないので、一人ひとりの能力が最大限に引き出され、創造的なプレーにつながることがあります。

親和型は、勝利よりも、チーム内の人間関係を重視する指導者になります。このような指導者の場合、選手起用においても、スキルレベル(上手・下手)や将来性よりも、年長者や経験年数を重視し、多くの人が試合にでることができるような配慮をします。チームからの離脱者は少なく、長い年月をかけて成績が向上します。

民主型は、選手や周りの意見を取り入れる指導者になります。ただし、全ての意見が取り入れられるわけではありません。民主主義では、過半数の意見が採用されることになります。民主型の場合、トップダウンでの決断ではないので、意見の合意・決断までに時間を要することがあります。しかしながら、みんなで決めたことになるので、決定に対してそれを貫こうという一人ひとりの気持ちは強くなります。自分たちの考えが反映され、時間がかかるものの成績も向上するので、選手の満足感も高くなります。

一般的には民主型の指導者が望ましいのですが、全ての場合に上手く働くとは限りません。チームの置かれている状況やチームの目標、メンバーの資質などによって、適する指導者のタイプも変わってくるのです。また、ある指導者があるチームでは上手く機能しても、違うチームの指導では上手く行かないこともあります。これは、チームの目標やメンバーの資質が異なるためです。