あおいちゃんには大変申し訳ないのだが、東京メトロを使わずに僕は広島に向かっています。
なんちゃら新幹線は朝の6時にスーッと品川を走り出した、もう新横浜に着く。
よく知る街が時速300kmで流れていきあの日の過ぎていった時代を思い出させ、口の中から溢れだす煙草の匂いがあの日の軟式野球部の男の子たちをフラッシュバックさせる。
隣のクラスには人気者がいて、僕はいつもそいつを眺めていた。
体育の授業では人気者で、話をさせれば笑いがとれた男の子。
彼をとりまく男の子たち。
彼に憧れた男の子たち。
新幹線の窓の外を見ると、まだ外は暗いから自分の顔がうつっていた。
ザンギリアタマに大きな縁の眼鏡をかけた、うさんくさい文学少年はあの頃と大して変わりはせず、ただ全速力で走っていく。
空が明るくなってきた。
カラメルソースの色の朝焼けだ。
明後日。
家に帰ったらシチューを食べなきゃ。
昨日たっぷり作ったのだから。
