司馬遼太郎、磯田道史さんが面白い!:日本国家/組織が誤りに陥って行くときのパターン | ルーシー・わんのブログ

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僕がこれまで読んだ本の中で、印象に残った本、読んで良かったと思える本、影響を受けた本の紹介を中心に書いていきたいと思います。

司馬遼太郎、磯田道史さんが面白い!

 

TVにもよく登場している歴史学者、磯田道史さんが司馬遼太郎を正面から取り上げながら、司馬作品と日本史を解説してくれているのが「『司馬遼太郎』で学ぶ日本史 」(NHK出版新書 517)。

 

磯田さんによると、歴史文学は多く3つに分けられ、史実に近い順で史伝文学、歴史小説、時代小説となっている。司馬さんの作品の多くは、歴史小説だそうな。つまり歴史資料に沿って小説を書いている。

 

読んでいくとワクワクして夢中で読み進められるストーリーになっているばかりでなく、その物語の中から歴史的な意味やそこに働く力、更に人物像を俯瞰・概念化して読み解いてくれている。慧眼だ!

 

今「竜馬がゆく」(文春文庫)の全八巻中の第6巻目を読み終えたところ。

 

ちなみに、磯田さんから見て、その作家の最高傑作は歴史的史実に最も忠実に書かれた「花神」だそうだ。村医から一転して官軍総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげた、日本近代兵制の創始者・大村益次郎の波瀾の生涯を描いている。

 

僕が最初に読んだ司馬さんの小説は、学生時代の頃で、「項羽と劉邦」。

 

歴史から何を学ぶか?

その磯田さんの書籍の「おわりに」に書かれた次の文章が示唆的だと思う。

 

・“若き日の司馬さんが目にしたのは、国家が命令を下してみんなが「一億玉砕」を叫んで戦争に行く、付和雷同してついていく日本人の姿でした。しかし、自分の考えをしっかり持って行動する人間が日本の歴史を動かして来たという事実を、司馬さんは小説に描きだしたわけです。”

 

「竜馬がゆく」の主人公、坂本龍馬がまさにその一人。藩や幕府や天皇ではなく、当時の日本が、中国のように欧米によって侵略されて植民地化されないように、日本という当時考えられていなかった大局的な枠を捉えて、周囲の人々を動かして行った。お見事!

 

次の磯田さんの言葉も歴史からの警告として的を射ている。

 

“日本国家/組織が誤りに陥って行くときのパターン;

・集団の中に何かひとつの流れができると、いかに合理的な個人の理性があっても押し流されていってしまう。

(一部略)

・情報を内部に貯め込み、組織外で共有する、未来に向けて動いていく姿勢をなかなかとれない。(引用終り)“

 

いまの自民党組織風土もその悪癖から免れていない。