「なんちゃってバレエ」とか「なんちゃってバレリーナ」なんて言葉があります(死語かな)。
これは「ちゃんとしたバレエではない」とか「ちゃんと基礎が出来ていないバレリーナ」を意味したり、あるいは大人バレエを習っている私達が自分達を卑下して使う言葉だったりします。
バレエはもんのすごい分厚い基礎の技術の上に、段階的に技の訓練を重ねて初めて、他人様に見て頂けるバレエになります。
発表会はそのレベルまで行かなくても、頑張って練習した成果を家族やお友達に観て頂く機会ですので、なるべく見苦しくない程度に先生が整えて振付けしたりして下さいます。
(なので、昔は大人バレエの私達が古典のバリエーションを踊れる機会は殆どなかったんですよね)
きちんとしたバレエ教師の先生は基礎の大切さは身にしみてご存知なので、児童や大人からバレエを始めて数年は基礎ばかりの訓練になります。
でも、その基礎ばかりのクラス内容ではあまり楽しくないので、生徒さんはどんどん踊らせてくれる先生のクラスやスクールへ移ってしまいます
先生は仕方なくプロの朝クラスのように、ある程度センターでのコンビネーションが含まれるクラス内容にせざるを得ません
コンクールの審査員とか、元プリンシパルとか、何人もプロを出して来た有名教師とかのスクールでないと、そんなクラスは中々経営的に継続せることが難しい現実です。
私も基礎重視、基礎訓練大好きな人間です。
それは、技術が狂って出来なくなった時に基礎を集中して訓練すると直ったりする事が多いからです。
ピルエットが狂った時、まっすぐ立つ意識、4番を踏む技術、4番から正しいルティレ・バランスに上がりキープする技術、首を水平に回す技術、脇を締め続ける意識…他にも本当に様々なチェックです。
基礎は必ず自分を助けてくれるツールです!
と、ここまでは基礎が本当に本当に大事だというお話をしました。
ここからは大人バレエの現実を体感して、私が考える事を書いて行きます。もちろん正しい考えではないかも知れませんので、その点はご留意下さいね。
「基礎をなるべくしっかり習得してから次のステップに」、これは本当に理想ですし、先生方がその方が本当のバレエにより近づけるし、怪我もし難くなると言われるのも本当だと思います。
私も20代や30代からバレエを始める方なら(レッスン内容や回数、本人の意識にも寄りますが)、10年近くは基礎を固める事をお勧めします。10年やっても完全には身につきませんが。
でも、40代、50代、60代でバレエを始める方にはどういうペースでの訓練が適切なのでしょう。それについての研究はまだされていません。
子供のバレエの訓練と同じくらい、大人バレエの訓練も課題が多いと思います。医者なら診療科が異なるくらいだと思います。
大人は生活環境や身体の問題とバランスを取ってレッスンを続けなければなりません。毎日レッスンなんて出来る人は稀ですし、出来ても身体に無理が掛かって怪我ばかりになってしまいます。
そんな環境の中で基礎ばかりが何年も続けば、やはりもう少し動いてみたくなる気持ちを否定出来ません。
バレエは素晴らしい芸術です。その芸術の模倣であっても技術習得には凄まじい時間と努力が必要です。大人には中々そんなに時間も体力も割けません。
では、大人は観ているだけしか許されないのでしょうか?
日本のバレエの良いところは、誰でもバレエを習うことが出来ることです!
バレエは、たとえ「なんちゃってバレエ」であっても踊る事は楽しいです。バレエの音楽で動きで踊ることには本当に癒されます。きびしい毎日の中での救いになっている人もいます。
そんな人達がいることも許してもらえないだろうか?と、私は思うのです。
これは芸術を追求している世界にいる人達とは歩む道も次元も違います。
本当なら「バレエ」という名前を使ってはいけないのでしょう。
私も、ポアントを履く技術もない方がポアントを履いてバリエーションを踊る事には疑問を感じますし、パートナーにしがみつき介護のようになっているパドドゥにも否定的です。
そんな姿がバレエだと思って欲しくないです。
自己満足の為なら何をしてもいいという事はないとも思っています。
でも大人バレエの皆さん、とても楽しそうです。
良い、悪い、だけではなくて、幅広い中間のルールのようなものも、教師の世界で意思統一して頂けたらもう少し良い状態になるのではないでしょうか?
歳を取ると満足?にレッスン出来るのもあと何年かと思います。
身体が痛くてレントゲンを取れば骨や軟骨が潰れています。
脚も上がらないし、気持ちよく跳ぶことも出来なくなります。
身体を休めたくても家族の世話や介護でくたくたになります。
それでも、レッスンでほんの少し踊れることはとても心の支えになっています。
みんなみんな「バレエ大好き」なんですよね
少しずつでもより良いバレエ界、バレエ環境になって行きますように。
…昔に比べたら今は天国ですけどね〜